10円ハゲつまり、医学的にいうところの円形脱毛症ですが、たまに外来で相談されることもあります。

サイズは色々ですが、以前、「精神的なストレスのために、カテコラミンが多く出て、そのために

頭皮の血流が悪くなり、皮膚の恒常性のバランスが崩れるから」と考えられていました。

カテコラミンは自律神経系にはたらくアドレナリンなどのことです。恒常性というのは体のバランスを

一定に保つはたらきのことです。円形脱毛症の患者さんの約75％にうつ病や不安神経症などの精神疾患

を合併することが知られています。ですが、ここ最近の考え方は異なってきているようです。

日本の円形脱毛症の発生頻度は人口の１〜２％で、欧米と比較しても頻度は変わりません。精神的な

ストレスが乳幼児にはないとは言えないのですが、乳幼児にも同様に発症し、日本でも欧米でも一定の

割合で起きているようなので、精神的ストレスとは直接には結びつかないことが推測されます。最近は、

円形脱毛症になりやすい遺伝子も同定され、家族歴が深く関係することがわかりました。

円形脱毛症の患者さんの毛穴部分（毛包）を採取して調べると、自己免疫反応を起こしていることが

病気に本態であることもわかりつつあります。円形脱毛症の人は、アトピー性皮膚炎、花粉症、喘息

など他のアレルギー性疾患を優位に多く合併することも証明されています。どうやら免疫が絡んでいる

のは間違いないようです。精神的なストレスが免疫を狂わせるのは確かなのですが、直接的な原因では

ありません。

円形脱毛症のように見える患者さんの中にはトリコチロマニア（抜毛症）と呼ばれる精神疾患の方も

おられます。意外とお悩みのことが多い脱毛症。皮膚科の先生のようにはいきませんがご相談ください。