2026.05.24

プラセボ(プラシーボ)効果について考える

プラセボ効果は、プラセボ(偽薬)を服用する人が本物の薬だと信じ込むことによって生じる効果だと考えられます。一方、プラセボだとわかってプラセボを服用しても、一定のプラセボ効果が発現することもあるのです。このようにプラセボであることを開示して投与されるプラセボをオープンラベルプラセボ(OLP)と呼びます。2016年に腰痛に対してのOLPの有効性を検証した研究結果が報告されました。この際には疼痛や機能障害に対して有効性が示されたのです。一方、2020年には慢性腰痛に対して日本人を対象とした研究がなされたのですが、OLPの有効性は示されませんでした。この違いは、研究の対象となる人の組み入れの違いもあります。2016年の研究では、「腰痛に対する心と体の画期的研究」と言う名目でSNS、雑誌などの広告を介して参加者が募集されました。一方の2020年の研究は外来受診した患者が組み込まれたために、プラセボに対する期待値が大きく異なっていたのでしょう。面白い研究はまだあって、学生時代の試験直前・試験中の不安や緊張に対してOLPがどう働くかをみた研究もあります。OLP群の被験者は朝と夕の2回偽薬を内服して2週間後の試験に臨むのですが、OLP群はテストに対する不安が軽減されたのです。同様の研究で、自動車教習所の試験に対する不安や、医学生の試験期間中のストレス、疲労感の緩和に対する有効性もプラセボ効果があると報告されています。OLPに対する被験者の期待値や治療成功に対する関心の低さが、統計学的有意な差異を認めなかった理由として考察されます。ですが、実験的に誘発された情緒的苦痛(悲しみ、心理的苦痛、掻痒感、認知能力、不安)やアレルギー性鼻炎、慢性腰痛、抑うつ症状、がん関連の疲労、過敏性腸症候群、膝関節炎に伴う疼痛などに有効性が示されています。結構効くじゃん!偽薬なのに・・・と思いませんか?実際に2023年に報告された論文ではOLPに対する被験者の期待値や治療成功に対する関心の低さが統計学的に有意に導かなかった可能性を指摘しています。つまり信じていなくてはダメ、信じれば救われる。なんだか宗教の世界のようですね。それを裏付けるような研究は、2020年に報告されたホットフラッシュに関するOLPの有効性です。被験者の女性はプラセボ治療に当初から肯定的な価値観を持っていて、好奇心も旺盛でプラセボ治療には害がないと肯定的な価値観を有しており、OLPの服用により症状の緩和を経験したことが、治療効果に対する確信をさらに深めて、症状のコントロール感と主体性を高めることに良い影響を与えたのです。つまり、プラセボに対する肯定的な価値観、症状改善に対するプラセボ効果の期待値、症状に対する自己モニタリング、症状に対処するための主体的な行動がOLPの効果を最大限引き出す重要な要素となるのです。皆さんも何かを信じてみましょう。