おしっこがした〜い
人間の基本的な感覚には、味覚、嗅覚、触覚、視覚、聴覚の五感があります。一方で、「おしっこがしたい」と感じる尿意なるものはその五感の中には入っていません。つまり第六感ということになるのでしょうか?膀胱がいっぱいになると尿意を感じて排尿中には膀胱の中身が減っていくのを感じます。この臓器の伸び縮みを感じる感覚というのは、これまでよくわかっていませんでした。体内の力学的な刺激を感知する機能が我々の身体に備わっていることが明らかになったのです。「メカノセンサー」と呼ばれるこの機能についての研究報告はおしっこが出にくくなったり、逆に頻尿になったりする排尿障害の治療にも役熱可能性があるとして注目されています。組織の歪みを感知するメカノセンサーPIEZO2とその姉妹タンパク質であるPIEZO1があります。PIEZOという言葉は圧や押さえるといった意味のギリシャ語らしいのですが、細胞内に情報を伝えるセンサータンパク質の一種です。PIEZOは組織の伸び縮みがあった際にその圧力や伸展・収縮の刺激を脳に伝えるセンサーなのです。PIEZO2は我々の全身の様々な臓器や組織に存在していることがわかっています。肺の伸び縮みを感知して呼吸を調整したり、血管内で血圧を感知したり、皮膚の触覚を媒介する役割も担ったりしていることが判明しています。米国の研究チームはPIEZO2の機能がない遺伝子変異を持って生まれた2人の若い患者の協力を得て、PIEZO2の役割を検討しています。知能や読み書きなど日常生活にはほぼ問題がないにも関わらず、目隠しをされると、ほとんど歩けなくなってしまいます。膀胱が満タンであるという感覚に乏しくて失禁を避けるために排尿を予定通り行うことや、排尿時に膀胱を完全に空にするということはできませんでした。マウスでの実験もPIEZO2遺伝子が欠損していると膀胱が満たされていることを感知できなくなり、排尿時の筋肉制御にも異常がみられるのです。つまり、マウスも人間も正常な膀胱の感覚や正常な排尿にはPIEZO2が必要であることがわかりました。一方で、PIEZO2がないと全く排尿できないというわけではないことから、別のメカノセンサータンパク質が泌尿に関与している可能性が考えられます。不足した機能を他の機能で補い合うのかもしれません。この研究が進めば、高齢者の排尿障害なども治療できるかのす映画あります。実は排尿システムがどのように機能しているのかわからないことも多いのです。普段何気なく、1日何回もしているおしっこ、なんだかありがたくなってきました。ちなみに、このPIEZOを初めて同定したアーデム・パタプティアン博士は2021年のノーベル生理学・医学賞受賞者です。