2026.09.05

『食欲の秋』を科学する

9月に入ると「食欲の秋」という言葉が現実味を帯びてきますが、なぜこの時期に食欲が増すのか、そこには明確な医学的根拠があります。一つは日照時間の減少に伴う「セロトニン」の低下です。精神を安定させるセロトニンが不足すると、脳は手っ取り早くその値を引き上げようとして、糖質や炭水化物を欲するようになります。もう一つは、冬の寒さに備えてエネルギーを蓄えようとする本能的な代謝の変化です。私たちの体内では、満腹を知らせる「レプチン」と空腹を促す「グレリン」という二つのホルモンが常にバランスを取り合っていますが、季節の変わり目にはこのリズムが乱れやすく、ついつい食べ過ぎてしまう現象が起こります。診察室で「どうしても間食がやめられない」というお悩みを聞く際、私がよくお話しするのは、無理な我慢よりも「幸福感の質」を変えることです。ここで活躍するのが、私の愛犬ポンポンのような存在です。実は、動物と触れ合ったり見つめ合ったりすることで、脳内では「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。このオキシトシンにはストレスを軽減し、過剰な食欲を抑える効果があることが最新の研究で示唆されています。ポンポンと接している時に感じる穏やかな幸福感は、医学的にも暴走しがちな食欲をなだめる「天然の抑制剤」と言えるのです。診察室ではなかなか聞きにくいことですが、「甘いものが止まらないのは意志が弱いから」と自分を責める必要はありません。それは脳がホルモンのアンバランスを調整しようと必死にサインを出している証拠です。そんな時は、ポンポンのふわふわした毛並みを思い浮かべたり、実際にペットと過ごす時間を増やしたりすることで、脳をリラックスさせてあげてください。もし、急激な体重変化や止まらない食欲に不安を感じる場合は、甲状腺機能や血糖値の乱れが隠れていることもありますので、早めに当院へご相談ください。科学的な視点と動物(ポンポン)がくれる癒やしの力を借りて、美味しく、そして健康的に秋の味覚を楽しんでいきましょう。