『第三の男』の影と血管の秋枯れ
昨日に引き続き、9月の季節の変わり目に知っておきたい脂質異常症の知識をお届けします。秋が深まるにつれて、夕暮れ時には街の景色に美しい影が長く伸びるようになります。影の名作映画といえば、モノクロの美しい陰影が印象的な『第三の男』が思い浮かびます。先日も、愛犬のポンポンと一緒に夕方の散歩に出かけた際、街灯に照らされたポンポンの長い影を見ながら、季節の移り変わりを実感しました。しかし、光が遮られた場所に深い影ができるように、私たちの血管の中にも、脂質異常症によって「静かな影」が作られているかもしれません。実は、脂質異常症の本当に恐ろしいところは、コレステロール値が高いこと自体ではなく、それによって血管が「秋枯れ」のように硬くもろくなっていく動脈硬化のプロセスにあります。ここで最新の循環器疾患のエビデンスに基づく事実をご紹介します。悪玉コレステロールの数値がそれほど極端に高くなくても、糖尿病や高血圧を合併している場合、血管の壁の内部でコレステロールがドロドロの塊(プラーク)を作りやすくなります。映画のラストシーンのように、あるいはポンポンの散歩道でハラハラと舞い落ちる枯れ葉のように、血管の壁もまた、この時期特有の寒暖差によるダメージを受けやすくなります。9月中旬、日中の残暑と夜間の冷え込みという大きな寒暖差によって血管が急激に収縮すると、そのプラークが破れて血管を詰まらせる引き金になってしまうのです。これが、秋口に心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる循環器疾患が急増する医学的な理由です。脂質異常症は自覚症状のないまま水面下で事態が進行していくのが特徴です。この「血管の秋枯れ」を防ぐための最新のアプローチは、食事の質の改善です。秋の味覚である青魚に含まれるEPAやDHAといった不飽和脂肪酸は、血液をサラサラにするだけでなく、血管壁のプラークを安定化させて破れにくくするという強いエビデンスを持っています。2日間にわたり、芸術の秋とポンポンの話題を交えて脂質異常症の真実をお伝えしてきました。ご自身の数値が気になる方は、ぜひお気軽に当院へご相談ください。最新の知見をもとに、血管の健康をしっかり守るお手伝いをいたします。