フリーダ・カーロ:不屈の画家に学ぶ「痛み」との向き合い方
昨日もルノワールでしたが、今日も近代画家の一人を紹介させていただきます。実は6月にも一度ブログで取り上げましたが、20世紀を代表するメキシコの女性画家、フリーダ・カーロ。彼女の作品は、鮮やかな色彩と情熱的な筆致で知られていますが、その多くは、彼女自身の「壮絶な痛み」を真正面から描いた自画像です。彼女の人生と作品を医学的な視点で読み解くと、病や苦痛とどう向き合うべきかという、深いヒントが隠されています。フリーダは18歳の時、乗っていたバスが路面電車と衝突する大事故に遭いました。鉄の手すりが体を貫通し、背骨や骨盤を砕かれる重傷を負いました。彼女は生涯で30回以上の手術を受け、人生の大半を鋼鉄のコルセットを装着して過ごし、晩年には右足を切断することになります。文字通り「痛みと共に生きた」画家でした。彼女がベッドの上で鏡を見ながら自分自身を描き続けたのは、単なる芸術活動ではありませんでした。医学的には、自分の苦痛をキャンバスの上に客観化して表現することで、脳が感じる「痛みの恐怖」を和らげる、一種の自己セラピーのような役割を果たしていたと考えられます。現代のペインクリニックで行われる「痛みの日記」や「認知行動療法」にも通じるアプローチを、彼女は自ら実践していたのです。私たちは、痛みを感じるとついそれを隠したり、我慢したりしがちです。しかし、慢性的な痛みを我慢し続けると、脳の「痛み回路」が強化されてしまい、より痛みに対して敏感になってしまうという悪循環(感作)が起こります。フリーダのように強靭な精神で痛みを表現し尽くすことは難しくても、現代には痛みをコントロールするための優れたお薬や、神経ブロックなどの治療法が数多く存在します。当院でも、痛みの診療においては、単に炎症を抑えるだけでなく、その痛みが患者様の生活や心にどのような影響を与えているかを丁寧にお伺いしています。痛みは主観的なものであり、他人に伝えるのが難しいものですが、フリーダが絵筆をとったように、言葉にして私たちに伝えてください。一人で痛みを抱え込まず、一緒にその解決策を探していきましょう。