医療と音楽
日曜日や祝日の日に限って早く目が覚めて困ってしまうと、相談されたことが以前にあります。私には全く考えられないことなので気持ちを汲むことはできませんが、遠足前の夜がなんとなくソワソワしてしまう感覚に似ているのでしょうか?目が覚めてしまうと眠れない人が多いようなので、とっておきの秘密を皆さんに・・・と言っても早起きする方であれば、楽しまれている方がきっとおられるはずです。清少納言の枕草子は聞いたことはあると思います。その中でも有名な「春はあけぼの」です。今は夏ですが・・・、「やうやうしろくなりゆく山ぎは、すこし明かりて、紫だちたる雲の、細くたなびきたる・・・」とありますが、「山ぎは」つまり山際です。山の端(は)となると山側ですが、山の上の空の部分が明るくなってきた瞬間がなんとも神秘的なのです。この瞬間に私が起きているということは、往診で出かけているということになります。ほんの数分しか味わえない感動的な光景を思えば疲れも吹き飛びます。夜明けの街を散歩すると若葉の匂いが体に降りかかってきて、2、3歳若返った気にもなります。このような最高の気分に浸っているときには、キザなようですが、決まってヴィバルディーの『四季』の第一楽章の「春」の一部分が口をついて出てきます。一種の条件反射みたいなもんですが、季節に関係なく、夏でも秋でも冬でも気分が良いときに自然と「春」の章を口ずさんでしまいます。これを口ずさんでいると気分が良くなるので不思議なもんです。医療の中にもっと音楽を取り入れようという動きは欧米では盛んと聞きます。苦痛に悩んでいる患者さん、うつ病の患者さん、不安状態の患者さんなどに、自分の気に入った音楽を聴かせることで、かなり効果を上げていることが報告されています。ですが、日本はまだ一般的ではありません。訪問診療で訪れた癌終末期の患者さんのお宅では「嵐」のコンサートのDVDが流れていたり、いわゆる老衰状態の方のお部屋には美空ひばりのCDがかかっていたりと目をつぶって、じっと聞き入っている顔には、もはや苦痛の影はなく和やかな表情になっていました。私が勝手に思っただけですが、音楽に耳をそば立てているうちに、若かりし頃の思い出がよみがえって来て、苦痛が薄らいでいるのであろうと考えられました。ベートーベンの「もっと光を!」ではありませんが、医療の中にも「もっと音楽を!」と気がしてなりません。ちなみに私は、このブログを書くときにはJAZZを聴いて描いています。