渡辺淳一の知られざる原点
爽やかな秋風とともに、じっくりと読書に耽るのが心地よい季節になりました。さて、これまで様々な文学や歴史の医学エピソードをお届けしてきましたが、今回は「恋愛小説の神様」として知られる作家・渡辺淳一の知られざる過去と、現代の循環器医学に深く関わる驚きのお話をしてみたいと思います。今までこのブログにも渡辺淳一は6回出てきています。そして先日、メルカリで渡辺淳一全集二十四巻を購入したばかりでテンションがあがっています。妻にはいつ読むの?と言われましたが・・・代表作『失楽園』などで世界的に有名な渡辺淳一ですが、実は作家になる前は、札幌医科大学でバリバリの執筆活動ではなく、メスを握る「現役の整形外科医」だったことをご存知でしょうか。医学博士でもあった彼が、なぜ医師を辞めて小説家という全く異なる道へ進むことになったのか、その裏には日本医学界を揺るがした大事件が隠されています。昭和43年、彼の勤務する大学病院で、日本初となる「和田心臓移植手術」が行われました。当時、心臓移植は世界でも始まったばかりの神の領域とも言える医療でした。しかし、この手術におけるドナー(臓器提供者)の脳死判定や、レシピエント(移植を必要とする患者)への適応基準を巡り、学内や世間から「本当にその移植は正しかったのか」という激しい疑惑の目が向けられることになります。このとき、同じ大学の医師という内部の立場から、医療の倫理や生と死の境界線に激しい疑問を抱き、鋭いメッセージを発したのが若き日の渡辺淳一でした。彼はこの事件をきっかけに大学を去り、のちにこの実話をもとにした医療小説『無影燈』などを執筆して、本格的な作家への道を歩み始めることになります。一人の医師の人生を180度変えてしまうほど、心臓という臓器は、医学的にも倫理的にも重く特別な存在なのです。渡辺淳一がかつて向き合った心臓の医学ですが、現代を生きる私たちにとっても、最も労わらなければならない最重要の臓器に他なりません。特に、夏から秋へと季節が変わり、朝晩の気温が下がってくるこれからの時期は、血管が急激に収縮しやすく、心臓への負担が自覚症状のないまま一気に高まる季節でもあります。高血圧や脂質異常症といった生活習慣病を放置していると、血管の動脈硬化が静かに進行し、将来的に心筋梗塞や狭心症といった命に関わる重大な心臓の病気を引き起こす引き金になります。小説が人間の複雑な心を描くように、私たちの心臓も、日々のストレスや食生活の乱れといった目に見えない負荷を敏感に察知してサインを出しています。秋の夜長に名作のページをめくるように、年に一度は健康診断の結果を見つめ直し、ご自身の心臓や血管の健康状態をじっくりと確かめてみませんか。日々の血圧の変動や心臓のドキドキなど、少しでも気になるサインがあれば、いつでもお気軽に当院までご相談ください。