hikikomori
本日の題決してミスタイプではありません。皆さんも一度は耳にしたことがあると思いますが、
「ひきこもり」です。ひきこもりはOxford辞書でも「hikikomori」と表記されていて、和製英語と
して普通に使われています。定義は「仕事や学校に行かず家族以外の人と交流しないまま6ヶ月以上
自宅に留まり続ける状態である」とされています。日本では146万人以上のひきこもりがいると推定
されています。それだけ見ると、日本独自の文化なのかと思われますが、実は世界中でもhikikomori
が急増して大きな問題になっているようです。いわゆるひきこもりは、病名ではなく状態なのです。
発達障害が原因にあったり、適応障害が原因であったりと様々なのです。もちろん治療には多方面
からのアプローチが必要になりますが、主に社会的・心理学的なアプローチが取られています。ですが、
2022年に九州大学の瀬戸山先生のグループが報告したのですが、ひきこもり状態にある42人と健常者
41人の血液データで比較したところ、ひきこもり男性の血液はアルギニンの値が低く、アルギニン
分解酵素とオルニチンの値が高値になっていました。アルギニンは鶏肉や豚肉、エビ、カニなどの魚介、
大豆などに含まれています。体内でアルギニン分解酵素によりオルニチンと尿素に分解されることが
知られています。つまり、ひきこもり男性ではアルギニン分解酵素が増加して、アルギニンが分解され
分解産物のオルニチンが増加しているのです。その理由は明らかではありません。ですが、サプリメント
などでアルギニンを補給すれば、ひきこもり症状が改善する可能性を示唆しているのです。また、この
研究ではビリルビン値が低く、アシルカルニチンが高値になることも判明しております。この血液の変化
がどんな意味合いを持つのかは不明ですが、血液成分のパターンをAIに学習させると、血液検査をした
人間がひきこもりか、ひきこもりである場合の重症度を高い精度で予想区可能となりました。つまり、
引きこもりは「甘えている」「怠けている」「人間的に弱い」など精神論の犠牲になり、社会構造の問題と
なっていた面も少なからずあったと思いますが、医学的にきちんと治療できる疾患である可能性が示唆
されました。今後はhikikomoriに効く栄養療法の開発が待ち遠しいです。