アレクシス・カレル
私はもともと心臓血管外科医でした。というのもおこがましいと思っています。私は、本を読む
ことは全く苦にならないので、先輩医師にどんな本を読んだらいいのかと尋ねていました。
いつも洋書を言われるので、当時もAMAZONで注文しましたが、カークリン・バレットボーイス、
またコーンの心臓外科の教科書、血管外科であればラザフォードの教科書といった感じで1冊が
ものすごく厚くて枕にして眠れそうなくらいなのです。なんの疑問にも思わずICUや医局で
暇を見つけては読むようにしていました。日本語の教科書があまりにも少なくて洋書を勧められた
と考えていました。そんな教科書に必ず出てくるのがこの人なんです。「アレクシス・カレル」。
1912年にノーベル生理学医学賞を「血管吻合および臓器の移植に関する研究」で受賞したのです。
今日はこの人がフランスのリヨンで生まれた日なのです。教科書に記載があったことを思い起こして
いますが(間違っていたらごめんなさい)、カレルと血管吻合との出会いは、リヨン大学を卒業して
から間もないころ、リヨンを訪問中だった大統領が無政府主義者に刺されて門脈からの大量出血で
死亡するという事件が起きたのです。この時、カレルは「門脈を縫合すれば助けることができたはず」
と考えて、当時不可能と考えられていた血管縫合をライフワークとしたのです。
カレルはその後米国のニューヨークのロックフェラー研究所に移籍して、現在の血管外科のほとんど
すべての基本的な手技を動物実験で開発して、あらゆるケースの血管縫合・吻合、人工物を用いての
血管修復を試みています。また、共同研究者のガスリーと臓器移植にも取り組んで、犬の心臓移植を
人の移植のはるか昔にやっていたのです。余談ですが、大西洋無着陸横断のリンドバーグって
聞いたことはありますよね?1930年にリンドバーグとカレルは共同で血液酸素化装置を作って
いるのです。リンドバーグはパイロットではなくて機械工学出身で妻の姉が弁膜症で医師に見放され
人工心臓を作りたいとカレルの研究室に訪れたのでした。今日は血管外科の父と言ってもいいこの人が
生まれた日なのでした。