2025.09.11

人工透析のはなし

先日、某総合病院に通院中の患者さんで足が腫れるから見て欲しいと受診いただきました。

お困りなので受診されたと思うのですが、看護師の病歴聴取で実態が明らかになることもあります。

まさにそうでした。数日前までその病院で透析を受けていたというのです。つまり腎臓の状態が

思わしくないので、緊急の透析を受けてからしばらく入院していたのです。なぜ?主治医に相談を

しないのか?総合病院の事情もあるのですが、主治医が曜日によって外来に出ていない!ということ

でした。ある意味律儀な人だな〜と思いました。それで困って当院に相談されたのですが、どうやら

心臓も悪いとのことで、内服内容も不明だったので受診を促しました。それが結果一番近道なのです。

今回の患者さんもお困りの腎臓病は、50年くらい前までは不治の病でした。どうすることもできずに

亡くなることが多かったようです。なんとかできないかということで20世紀初頭から人工腎臓の

研究がなされ始めました。1944年ドイツ占領下のオランダでコルフ博士が人工腎臓の作成に成功

しました。第二次世界大戦後に、コルフ博士は米国にわたり研究を継続しさらに人工腎臓をより

良いものへと改良しました。臨床応用されたのは1950年の朝鮮戦争で挫滅症候群と言われる急性

腎不全の死亡率を90%から50%に下げたとされます。1960年にシアトルにあるワシントン大学で

スクリブナー博士が動静脈シャントを用いた透析療法を開始しました。日本では1970年ごろから

人工腎臓が普及し、現在では30万人以上の患者さんが恩恵を受けています。コルフ博士はその後、

ユタ大学で人工心臓の研究をしていましたが、2009年に98歳でお亡くなりになられました。

私も学生時代にコルフ博士の教科書を読んだことがありますが、人工腎臓からの人工心臓を開発

するなんてすごいな!と思いました。ノーベル賞に値する業績だと個人的には思うのですが・・・