難聴と認知症
難聴と認知症は、どちらも決定的な治療法がなく、発症してしまえば回復が困難であると考えられています。
ここ最近認知症の新薬が上市され、アルツハイマー型認知症の早期の方には希望が見えてきました。
ですが、基本的に神経障害という点では両者の危険因子がオーバーラップすることも指摘されています。
ランセットという医学雑誌に難聴は認知症の修正可能なリスク要因のうち最も影響力のある要因であると
されております。ちなみに修正可能なリスク要因としては中年期の難聴が8%、外傷性脳損傷が3%、
高血圧が2%、肥満が1%、飲酒が1%とされております。中年期だけで15%を占めておりますが、
このような生活習慣病や生活スタイルに対して介入することで40%のリスク要因を避けることも可能であると
報告されました。ですが、難聴がさまざまな要因を介して間接的に認知症へのプロセスを助長することが
示唆されていて、私個人的には、難聴によるコミュニケーション障害から、対人交流の減少や社会参加の減少など
をきたすことで社会的孤立、孤独、うつ、活動減少、低栄養、寝たきり、フレイル(虚弱状態)へと進行する
のではないかと思います。
このブログを見ておられる方であれば、十分理解できると思いますが、他人とお話をすることで嫌な思いも
することもあるでしょうが、楽しい思い出を作る機会が多いと実感されているのではないでしょうか?
じゃあ補聴器をつければ認知症は避けられるのか?という質問には答えがないと言わざるを得ません。
難聴管理についての記載では、認知症リスク低減効果に関するエビデンスが十分ではないとされているからです。
認知症予防の視点から考えると複数のリスク要因が絡み合うことで発症する認知症に対して、難聴対策のみだけで
効果が出現しにくいのは当たり前かもしれません。複数のリスク要因には、いろいろ取り組めることを
駆使して難聴はもちろん生活習慣病対策、生活スタイルそのものに関する対策を同時に進めることが
重要であることが報告される日も近いと思います。
いずれにしても、これを食べたら、これを飲んだらのようなHow to対策ではなく色々なことに
取り組む姿勢を今から持ち続けたいと思う今日この頃です。