2026.01.05

食後のお腹の痛み

食後に走ったり、早歩きをしたりすると左脇腹が痛くなる。でも歩くのをやめると速やかに改善すると言う経験、皆さんにはありませんか?運動に関連して起こる腹痛のことをETAP(exercise-related transient abdominal pain)と言います。ちなみに肩に疼痛が伴うこともあります。若年者に多い傾向があるのです。近頃そういえば感じたことがないな、中年だからかな?と考えているとそもそも食後に運動する機会など皆無なのです。運動すると、肝臓は安静時の82%、脾臓は54%までには血流は低下します。ETAPが側腹部に起こるケースが多いことも考え合わせると機序は肝臓脾臓の虚血によるものではないかと疑われていたこともありました。ですが、肝臓脾臓の血流は立っただけでも下がりますが、起立だけで腹痛が起こることはありませんし、ショック患者でETAP様の腹痛は認められないことからも、肝臓や脾臓の虚血(血流が行かない)説では説明できません。もう少し突っ込んだ研究によると、自転車運動では32%でしか認めないものの、乗馬では62%まで認めると言うのです。このことから振動による壁側腹膜の牽引刺激でETAPが起こると言うものが現在の有力仮説です。大量の食事や高張な飲料の摂取後には、消化管内容物により壁側腹膜が牽引されて、ETAPが発症しやすいのです。たくさん食べるのは、運動2時間前は避けるのが無難でしょう。お腹の横の筋肉である腹横筋や内腹斜筋が発達していることで内臓が固定されるので、ETAPの頻度が少ないことも知られています。つまり今まで運動習慣がなかった方がETAPを起こしやすいのも納得できます。一般的にETAPが男性よりも女性に多いのも、筋肉量が少ないことに関連するのかもしれません。腹横筋を鍛えるようなドローインやプランクなどの運動がお勧めなようです。冒頭に書いた肩の痛みを運動中に自覚すると狭心症を考えてしまう人もおられるでしょう。ETAPの肩の痛みと狭心症の放散痛の大きな違いは、①側腹部痛がメインであること、②疼痛の性状は鋭いこと、③嘔気嘔吐は伴わないこと、④食後にのみ起こりやすいことが心臓の痛みと違うところです。ETAPは運動中止で速やかに改善することも大きな違いと言えるでしょう。新年から走り込みたくなる気持ちもありますが、食事の後は控えましょう!