本当に悪玉なのか!?
1910年に独国の化学者であるヴィンダウスは人間の大動脈アテローム性動脈硬化性病変にコレステロールを発見したのです。そこから動脈硬化とコレステロールの物語が始まりました。LDLコレステロールは、私もそうですが悪玉コレステロールとして呼んで目の敵にしています。”The lower, the better”(低ければ低い方が良い)の合言葉でLDLコレステロールは低い方が良いという信仰のようなものを感じます。ですが、コレステロールそのものは人体に不可欠なのです。細胞膜の成分として、ステロイドホルモンの原料として、はたまたビタミンDの前駆体として、胆汁酸の材料となるのです。コレステロールは食事から必要量の20%未満しか摂取できないので、残りの80%以上を肝臓で作ります。LDLはコレステロールを全身に配るためのトラックのようなもので、それ自体は問題ないものなのです。LDLは肝細胞の表面にあるLDL受容体を介して循環から除去されます。つまり血液中のLDLコレステロールは全身の細胞と肝臓に取り込まれなかった残りであるので、その値は空腹であっても食後であっても同じなのです。じゃあ、LDLコレステロールが低ければ良いのか?LDLコレステロールは栄養状態の指標にもなりえます。つまり高齢者でLDLコレステロールが低値であれば栄養不良、がんや感染症で肝臓でコレステロールが作れない病態を疑います。研究などでLDLコレステロールが低いと予後が悪いとの報告があるのはこのためだったのです。たまに外来で若い人に見かけますが、しっかりご飯食べていますか?ということにもなります。閉経後の女性で高LDLコレステロール血症になる方は実は問題がないのです。血管内皮に蓄積しないからです。血管に溜まるLDLは酸化したLDLや糖化したLDLなど様々な修飾されたLDLが血管内皮細胞の機能不全や損傷を起こすのです。なんじゃ?その修飾LDLって?とお思いになるでしょう。この修飾LDLは、急性冠症候群や脳梗塞、末梢動脈(手足の動脈)疾患の既往があれば、もともと血管内で修飾LDLが作られている可能性があります。糖尿病やメタボリックシンドロームなどでも修飾LDLが作られている可能性があります。つまり、LDLを下げないといけない人は、今例を出した病気を抱えた人です。慢性腎臓病の方で特にeGFRが30未満の方も注意が必要で、LDLが正常であっても修飾LDLを減らすためにしっかりとLDLコレステロールを下げる必要があるのです。なんでも下げれば良いかではなく、狙いを定めて治療すべきなんですね。迷ったら、ネットを見るのではなく、いりたに内科にご相談くださいね。