2026.04.11

ブラック・ジャック にはなれなかったけれど

皆さんは、漫画を読まれますか?私は開業してからよく読むようになりました。気分転換を図っているのかもしれませんし、現実世界から逃避できるのも魅力的かもしれません。学生時代特に高校生の時に手塚治虫のブラック・ジャックにハマりました。もちろん医学的なことは分かりませんが、わからなくても面白い内容で世界観に引き込まれました。医学部に入ってから手塚治虫が大阪大学の医学部を卒業していることを知りました。卒業後10年目に学位も取っているのですが、博士論文のテーマが「異型精子細胞における膜構造の電子顕微鏡的研究」ということで、漫画からは想像もできないことを研究されていたのですね。手塚先生の生み出した数多くのキャラクターの中で、医学といえば文句なしに「ブラック・ジャック」でしょう。彼の本名は「間 黒男(はざま くろお)」で医師免許を持たない”モグリ”の外科医なのに手術は神業という設定なのです。常套句として「治る見込みは少ない。90%生命の保証はない。だが、もし助かったら3,000万いただくが・・・」と法外な報酬を要求するが、実は心には優しい思いが込められていて、「鬼手仏心」を絵に描いた漫画だったのです。ブラック・ジャックの屈折した心は生い立ちに秘密があるのですが、高度経済成長期の歪み、物質至上主義の体現とも取れます。手塚先生の奥様は「手塚の一生のテーマとも言える生と死に向き合う医師として、ブラック・ジャックは誰よりも生命に対して厳しく謙虚な人間として描かれています。心の病巣や社会背景にまでメスを振るクールなまでの主人公は、手塚が自ら成しえなかった医師としての理想を求めた姿なのかもしれません」と述べています。つまり手塚先生もある意味理想像を描いていたかもしれませんね。私自身、いまだに読み返すこともありますし、考察本も出版されているので医師の中にもコアなファンが多いのは確実でしょう。手塚先生の漫画で医学系の「きりひと讃歌」や幕末の「陽だまりの樹」も大変面白かったです。特に「陽だまりの樹」は手塚先生の曽祖父で緒方洪庵の適塾に安政2年(1855年)に入門した手塚良庵がモデルとなっています。長編漫画ですが、福沢諭吉なども出てきて幕末好きならたまらない作品だと思います。機会があればぜひご一読を!