2026.04.20

アスピリン

3月の初めはうっすらとした緑色であった柳の枝は、4月も半ばを越した今ごろになると、もう堂々とした若葉で包まれています。春は柳の木の芽と共に来ると言われていますが、まさにその通りですね。ところで、柳の樹皮に解熱作用があるのを見出したのは英国のストーンです。ストーンは高熱を出しているマラリア患者に柳の樹皮を用いて解熱させました。だいたいマラリアなどの伝染病・感染症が流行するようなところは湿地帯であり、そのような場所には柳の木が生えていたようです。ストーンは進行厚い牧師さんで、「神は、人間が病気にかかるような所には、治療薬も必ず用意してくださっているに違いない」と考えたようです。そして、彼は柳を神が用意してくれた解熱薬と考えて、マラリア患者に投与したのです。この事がきっかけとなり、柳の樹皮からサリシリンという物質が有効成分として抽出され、これからサリチル酸が作られたのです。このサリチル酸は柳(サリックス)に由来しているのです。サリチル酸は胃の障害を起こしやすいことから、これをアセチル化した薬物アセチルサリチル酸(すなわちアスピリン)が作られたのです。アスピリンのルーツが柳とはちょっと意外な気がしませんか?古代インドでは、歯が痛いときには柳の小枝を加えたというので、柳に鎮痛物質が含まれていることをすでにその時代の人たちは知っていたことになります。今まではアスピリンといえば解熱鎮痛剤として投与される事が多かったのですが、近年は血管内で血液が凝固するのを防ぐ目的で使われるようになってきました。血液の小さな塊ができて、それが脳の血管にひっかかって、そこを詰まらせると、目眩や頭痛や麻痺などが一時的にみられる事があります。これは一過性脳虚血発作と言われ、24時間以内にこれらの症状は消失します。この一過性脳虚血発作が反復して生じる事があって、脳梗塞へと進展する恐れがあります。アスピリンはこの一過性脳虚血発作の予防薬として広く使われています。また、心臓を栄養する血管の冠動脈の中で血液が固まって流れが悪くなると、狭心症の発作が出たり、悪くすると心筋梗塞になることもあります。現在は広く狭心症や心筋梗塞の予防にもアスピリンが用いられます。外を歩いて春風にそよぐ柳の小枝を眺めながら、ふとアスピリンが頭に浮かびました。