BMI(Body Mass Index)の限界
体型を数値化して肥満を判定する指標としてBMI(body mass index)が用いられています。健康診断や私の外来でもBMIを基に診断・指導が行われているのです。ところが、BMIを肥満の基準にするのには「問題がある」と2023年、米国医師会は勧告したのです。なぜならば「BMIは過度に単純化されて不完全なだけではなく、体脂肪量が死亡率に与える影響について誤解を招くものである」とコメントしたのです。このBMIは1832年に歴史が始まりました。ナイチンゲールの師匠であり、ヒストグラム(データの分布を視覚化するために汎用されるグラフ)を発明した統計学の始祖、アドルフ・ケトレーが今で言うBMIを提唱しました(ケトレー指数)。1940年代に生命保険会社の副社長であったルイス・I・ダブリンが体重が重い人は保険料の死辛い額が大きいことに気づき、標準の人を「肥満」に分類すれば保険料を高く設定して、稼げるのではないかと考えて提携を数値化する指標としてケトレー指数を引用し、今まで標準だった半数の米国国民が瞬く間に「肥満」にされたのです。つまりBMIが保険会社の肥満の基準を作り、お金儲けをさせた数値でもあったのです。その後、1972年に生理学者のアンセル・キースがケトレー指数をBMIと命名しました。このキースさんは実は体脂肪量を評価したかったので、後年、BMIは体脂肪量の最良の指標ではないことを認めています。このように、実はBMIは19世紀に統計学者によって確立され、その後資本主義と研究の利益のために再ブランド化されたのです。成り立ちには医学専門家は絡んでいなかったことに驚きです。BMIは18.5〜25kg/m2までが標準体重で、それ以上は肥満とされています。映画『ターミネーター』の時のアーノルド・シュワルツネッガーのBMIはいくつだったと思いますか?なんと30です。肥満です。私よりも。ちなみに入谷くんは27.8です。つまり、BMIの最大の問題は「統計学的には意味があっても、個人の診断にはほとんど役に立たない」と言うことです。なぜか?BMIには体の脂肪、筋肉、骨の構成や脂肪の分布を一切考慮していないのです。「筋肉質」で体脂肪が低くてもBMIの基準では肥満と判定されます。逆に高齢者に多い「隠れ肥満」(筋肉が少なく体脂肪率が高い)はBMIが低値で「痩せ」と判定されて、体脂肪量を過小評価される懸念があります。もともとBMIは成人から中年男性を対象とした指標です。同じ基準で女性、小児、高齢者の肥満を判定できるかは不明なのです。生命保険会社がBMIを下げると保険料が安くなるキャンペーンを行ったこともありますが、全くのナンセンスです。