2026.04.26

肥満談義①

遡ること2500年前の古代ギリシャ、医聖と呼ばれるヒポクラテスは「肥満はそれ自体が病気ではないが、他の病気の前兆になる」と言いました。今、世界規模で問題になっているのが肥満とそれに関連した疾患です。日本では欧米人のような超肥満は稀ですが、骨格筋量が少なく脂肪の割合が多い「隠れ肥満」は少なくありません。肥満は食べ過ぎと運動不足のために生じる自己選択(あるいは自己責任)で、病気ではないと言う考えを多くの人がお持ちになっていると思います。ですが、世界では肥満はしっかりと病気(慢性疾患)であり、真剣に治療すべき対象であると言う流れになっているのです。そもそも肥満の何が問題なのか?循環器の切り口からすると、動脈硬化性心血管疾患、心不全、心房細動、突然心臓死、静脈血栓塞栓症など多くの心血管疾患のリスクです。さらに肥満は特定のがん(乳がん、子宮内膜がん、卵巣がん、大腸がん、膵臓がん、腎臓がん、前立腺がん)と密接に関連しています。ですが、肥満は高血圧や糖尿病など心血管リスク要因と比較して、リスクとして十分に認識されておらず適切な対処もされていません。また、現役肥満から一番声だかに訴えたいのは、肥満が社会的および対人関係に悪影響を及ぼす数少ない病気の一つなのです。就職差別もあるとされています。複数の調査で肥満であると修飾にとって非常に不利であるそうです。肥満では普通体重に比べて就職できる確率が83%も低くなる報告もあります。精神疾患と肥満の関係も深刻とされます。向精神薬の投与(治療中)、睡眠不足、食習慣の乱れ、身体活動の低下などが肥満のリスクを高めます。一方で肥満は体重に対する偏見や自己イメージの低下で鬱のリスクが高まることも問題です。米国疾病管理予防センター(米国CDC)は代表的な慢性疾患を心臓病、がん、2型糖尿病としています。2013年米国医師会は肥満を慢性疾患と認定しました。肥満を病気とすることで、医療従事者だけではなく一般人の肥満に対する偏見が軽くなる、肥満治療に保険給付がつきやすくなる、研究資金が増加するなどの利点が挙げられます。ただし、問題点として肥満も特定の症状がないことつまり「サイレント」なのです。でも高血圧、糖尿病、慢性腎臓病であっても基本的に「サイレント」です。また、昨日の話題でしたが、基準をBMIにすべきかどうかと言うことです。中国ではすでに過体重をBMI24以上、肥満を28以上としているようです。脂肪量が一定であっても、脂肪の分布により心血管疾患のリスクが大きく変わることが大きな問題でもあります。難しいですね。