2026.06.16

ドアウェイ効果!

皆さんにもよくある経験だと思うのですが、別の部屋に入った瞬間「あれ、何しにきたんだっけ?」と戸惑うことありませんか?外来でよく相談されることです。そして皆さん、そのようなことがあると認知能力(機能)が低下した証拠と思いがちなのです。ですが、数十年前の曲を間違えずに歌えることができるのに、さっき考えたことを思い出せないのは記憶力が衰えたからではないのです。脳の正常な働きなのです。若い頃に聞いた流行った楽曲の歌詞は「長期記憶」として保存されています。脳の様々な部位に情報を書き込んで、それらを結ぶネットワークの形で保持されているので、長い年月を経ても鮮やかに甦るのです。自宅で、車で、ひょっとしたら居酒屋さんなどで何度も楽曲を聴いているうちに神経細胞同士を繋ぐシナプス結合が強化され、効率的で安定したネットワークが形成されるのです。そうなるとイントロを少し聴いただけで自動的に楽曲のほぼ全体を思い出せるようになります。これとは対照的に何かをするために2階に上がったり、台所に行くなど、何かは「作業記憶」として脳の一時的な保管場所に置かれるのです。作業記憶はわずかな情報をわずかな時間とどめておくだけで、他の事柄に注意が向けば失われてしまうのです。別の部屋に行くと忘れてしまうことを「ドアウェイ効果」と呼ばれております。メガネを取りに行くという記憶は、以前の状況として組み込まれているので、別の場所に移動するとメガネを撮りに行くというタスクを思い出す手がかりがなくなるので、何をしにきたのかもわからなくなるのです。これは、脳が体験を意味のある多数の塊に分割して保管するように進化してきた所以です。分割して保管することは、膨大な情報の永続的な保持を可能にして長期記憶の形成を助けます。一方で2階に行く用事のようなかたまりはすぐに消されてしまいます。このドアウェイ効果を減らすためには、「充電器をとりに2階に行く」などと声に題していうことで減らすことができます。とりに行くものをイメージ化させて、移動時にヒントになるものを持っていくことも有効なのです。つまり年のせいではなくて、脳は何度も反復して情動で色付けされた情報を一時的な意図よりも優先しているのです。脳がやるべき仕事は十分にこなしているのです。