スタチンをご存知でしょうか?
酢橘(すだち)なら知っているよ〜という方は多いんではないでしょうか?スタチンは動脈硬化性心疾患の一次・二次予防薬として広く使われています。過去には脳出血既往例でスタチンが脳内出血再発リスクを増加させる可能性を示唆した報告もありました。日本人の研究ではLDLコレステロールが低値であれば脳出血死亡のリスクが高まるという報告がなされましたが、デンマークの大規模研究では、スタチンの使用で虚血性脳卒中リスクを有意に低下させて、脳内出血再発リスクの優位な増加は認められなかったようです。LDLコレステロール値を低下させても脳出血が増加することは認められていません。つまり、外来レベルであれば脳内出血の既往があってもスタチン投与を検討すべきなのです。このスタチン療法は糖尿病の新規発症リスクを容量依存的に増加させることが示されています。特に高強度のスタチンではプラセボと比較して新規糖尿病発症率が36%高く、低〜中等度強度のスタチンであっても10%程度の相対リスク増加が報告されています。ですが、このリスク増加の多くはHbA1cや空腹時血糖がすでに糖尿病診断基準に近い「境界型」の被験者に集中していて、スタチンによる平均的な血糖値上昇も非常に軽度(HbA1c上昇量:+0.06〜0.08%)にとどまります。日本でよく処方されているリバロ(ピタバスタチン)では、1mgと4mgで新規糖尿病発症に有意差がなかったという報告もあります。スタチンが誘因となる糖尿病の新規発症は、あくまで「糖代謝異常予備群」に対してであると考えられています。臨床上では、糖尿病患者であってもスタチンによる心血管イベント抑制効果の方が明確に上回るので、リスクを考慮した上でスタチン使用を検討すべきでしょう。また、過去にはスタチン使用後に一過性の記憶障害が出現したという報告が散見されましたが、あくまで自己申告(自覚症状)なので、その際に認知機能に対する客観的な評価が行われておりません。日本国内ではスタチン使用による認知機能低下の明確な有害事象は報告されていません。一昨年のLancet standing Commission2024の報告書では高LDLコレステロールは認知症リスク因子として位置付けられており、スタチンによるLDLコレステロール低下が認知症予防に寄与する可能性も示唆されています。すでに認知症を発症している場合にはスタチンが認知機能を改善させるかについては明らかになっていません。進行抑制については今後の更なる検討が必要です。つまりスタチン療法には出血性脳卒中のリスク増加、糖尿病発症、認知機能への悪影響など懸念点はありましたが、これらのリスクは限定的で、心血管イベント予防というベネフィットを上回るものではないので、スタチン投与を検討すべきです。