2026.06.25

在宅医療に思う

このブログを見ている方には在宅医療があまり身近ではない方が多いのではないでしょうか?例えばご自身の祖父や祖母が病院に通院できなくなり、ご自宅での療養を希望されて訪問診療つまり在宅医療を受けることとなったという方もおいでるでしょう。実際の例ではなく、こういう方がいて、身近にいる方であれば皆さんであったらどう判断するか一緒に考えてみてください。93歳の女性。アルツハイマー型認知症があって要介護5の状態(介護保険制度において最も重い介護度であり、日常生活のほぼすべてにおいて全面的な介助が必要な状態です。食事、排泄、入浴、移動など、あらゆる場面で人の手が必要となり、寝たきりの状態であることも多い)在宅医療が導入されて、家族も自宅での看取りを希望している。という方である程度は状態が安定していました。そのような方が昨日から発熱を認め、肺炎の診断となったのですが、在宅での加療するべきか、後方支援病院に入院加療を依頼すべきかで悩む場面があります。もちろん、ご本人が自宅で過ごしたいと希望されればご自宅での療養ということになります。このように定期的に在宅医療を受けている患者さんが発熱した場合に悩む場面が多いのも事実です。日本国内で定期的に在宅医療を受けている高齢者において、在宅医療による発熱治療の転機が入院治療と異なるかどうかを検討した後方視的研究では、死亡率は在宅医療群13%、入院医療群33%と在宅医療群で有意に低い結果でした。また、日常生活動作(ADL:病院に入院したら動けなくなるじゃないですか?それです)の悪化については在宅医療群23%、入院医療群43%、認知機能の悪化についても、在宅医療群6%、入院医療群29%と在宅医療群で有意に低い結果でした。この結果から定期的に在宅医療を受けている高齢者の発熱に対して、在宅医療は入院医療よりも死亡率が低く、ADLの維持にもつながることが示唆されます。もちろん、個々の症例によって違いは出ると思います。在宅医療を選択する理由の一つには、ご自身が慣れ親しんだ環境下で、家人に囲まれ人生の最後を迎えたいという希望があると思います。このような人生の最後を迎えることできるという事は、患者本人ならびに家族の満足度を向上させることが知られています。患者本人が希望する人生最後の場所と実際に死を迎える場所には大きなギャップがあります。このギャップを埋めるための促進因子について各種サービスと在宅死の関連について調査した研究があります。在宅介護サービス、デイサービス、ショートステイを利用している場合、在宅死に対する罹患率比がそれぞれ13.40、6.32、1.25であり各種サービスを利用することでより在宅での死を迎えやすくなるということがわかりました。在宅死を望む患者ならびにその家族を支援するためにもサービスを積極的に利用することが重要なのです。

Arai Y et al. Geriatric Gerontol Int 2020;20:482-7

Abe K et al.BMC Palliat Care 2020;19:121