2026.06.29

かのこ

シカの子ども、つまり「かのこ」が生まれるのは5月から7月中頃までです。北海道にはエゾシカという生き物がいました。皆さん、シカというと奈良の東大寺あたりをウロウロしていて、鹿せんべい欲しさにお辞儀をする賢い子達を想像しませんか?私が医師3年目に赴任した市立根室病院は根室半島にあるのですが、直近の都市である釧路から根室に続く道路はまさに根釧台地で何もないのです。あるのは森林ぐらいです。この道路でシカの事故が多いのです。突如道路に飛び出してきて車の前に立ちはだかり轢かれてしまうのですが(もちろん鹿は即死の場合が多いらしい)、車も多くの場合は廃車になるのです。薬屋さん(MRさん)と約束しているのになかなか現れないな〜と思っていたら急遽シカの事故で車が動けなくなり根室に到着できなくなったということも結構ありました。ある意味命懸けですね。私も当時ドクターヘリなるものがない時代でしたので、救急車で患者搬送に付き添って行きました。釧路まで3時間半(もちろん帰りも同じ時間がかかります)。ほぼ旅行感覚で患者搬送に出掛けていました。思い起こせば、エゾシカは大きくて私が北海道にいた時には増えて害獣となっていた気がします。そのためにジビエ感覚でエゾシカバーガーなるものも販売されていました(食べる気はしません)。「かのこ」いや、親しみを込めて「バンビちゃん」として人気があるのですが、誰でも知っている通り背中に斑点があります。その特徴をとって古くから「鹿の子まだら」という言葉もあります。在原業平の「時知らぬ山は富士の嶺(ね)いつとてか鹿の子まだらに雪の降るらん」の歌は有名です。生地の染め方にも「鹿の子しぼり」というしぼり染めがあります。可愛いバンビちゃんとは言い難いのですが、いつも連想してしまうのは、外来で「先生〜、特にぶつけてはいないんだけど、こんな反転ができるんだよな〜」と相談を受けます。いわゆる老人性紫斑なのですが、機械的刺激を受けやすい前腕が後発部位で特に治療は要さないのです。時折、高齢者の方でANCA関連血管炎やクリオグロブリン血症性血管炎などもありますが、下肢に見られる事が多いようです。老人性紫斑であれば未治療で消退することを説明し安心していただきます。たまにステロイドを長期にわたって内服されている場合は斑状紫斑や点状紫斑を生じる事があるので注意して診察します。皮膚科医ではないのでそもそも皮膚科の先生に診ていただいた方がお互い安心するかもしれません。久しぶりに鹿の子餅・京鹿の子を食べたくなりました。