2026.05.12

排尿困難「あ〜死ぬかと思った・・・」

排尿困難。みなさん聞いたことはありますか?なったことあるよ〜という方もおられるでしょう。実はこの排尿困難は、泌尿器科の代表的な症状の一つなのです。尿が出にくい、排尿が終わるまで時間がかかる、尿の勢いがなく尿線が細い、尿のキレが悪いなどの症状を言います。排尿は、膨らんだ風船(膀胱)の中の空気が、ゴムの縮む力で、管(尿道)から外へ押し出される動きに例えられます。風船のゴムの弾力が弱くなるか、管が細くなった場合、当然風船からの空気の出が悪くなります。これが排尿困難の仕組みです。ですから、膀胱の収縮力が低下する病気(神経因性膀胱)や尿道が狭くなる病気(前立腺肥大症)に排尿困難が起こるわけです。排尿困難が重症化して、尿意はあるものの全く排尿ができなくなる症状を、尿閉と言います。前立腺肥大症の患者さんによく起こりますが、風邪薬の副作用でも起こります。膀胱内に大量の尿が溜まります。私が今まで経験した尿閉患者さんで一番多く溜まった尿量は、実に2,000ml(通常の膀胱容量は約300ml)でした。先日もある施設に入所した手の患者さんがいらっしゃいましたが、入所して3日後に突然お腹が痛いと訴えていますと、訪問看護師さんから連絡がありました。下腹部がパンパンでという情報があったので、もしかしたらと考えて診察をすると明らかに外観から膀胱が膨らんでいる様子でした。尿道カテーテルをすぐに挿入すると1,700mlの尿が流出したのです。カテーテル挿入時に前立腺付近でやや抵抗があったので前立腺肥大症が原因なのではないかと考えました。患者さんは苦痛のために顔面が蒼白となり、冷や汗が流れ、下腹部は今にも張り裂けそうに緊満しています。経験者は一様に口を揃えて「死ぬ思い」と表現します。そしてカテーテルという細い管で膀胱から尿を出してあげると、苦しみから解放された患者さんは、「生き返った思い」と感謝の言葉を口にされます。この言葉を聞くと我々もとても嬉しいのですよ。