カリフォルニア?シカゴ?
The Daughter from California Syndromeという概念。
なんじゃそりゃ!とお思いになるのは無理もありません。
病気なの?う~ん、病気に関わる概念ですね。
大学で病棟の主治医をしていた時には身をもってよく経験していました。
救急車で大学病院に搬入されてその後、病棟に移り治療を継続します。
ですが、患者さんの病状がなかなか思わしくなく予後不良であることを
説明します。この時は大体、患者さんは意識が悪いので患者さんのご家族
に対して説明することが多いのですが、医師、看護師、患者さん御家族で
話し合いを行い、人生の終末の段階に過度な医療を行うことで、体に侵襲が
加わることを避けて、穏やかに最期の時を迎えることを提案します。
この過程を、終末期医療におけるACP(Advanced Care Planning)といい、
少し前に「人生会議」などともいわれていたことです。在宅医療でも必須です。
何度も話し合いを重ねて決めた方針があるにもかかわらず、遠方に住む娘(息子)
が突然やってきて、医者に会わせろ、説明しろ、と要求して終末期の方針が覆り
ようやく決めかけた計画が台無しになることをThe Daughter from California Syndrome
と呼ぶのです。これまで、ほとんど世話もしていなかったことへの罪悪感もあるかもしれません。
実の子供であれば、親にいつまでも生きていて欲しいと願う気持ちは重々理解できます。
ですが、現在同居や、近隣に住んでお世話をしている家族と時間をかけて話し合っていた方針が
遠方に住む家族の一言で、方針が変わり、人工呼吸器が装着されたり、延命治療が延々と行われる
ことが残念でならないのです。今後も老人保健施設からの延命治療を望まないと意思表示をした
患者さんが心肺停止で救急搬送となることもあり得ますが、心肺蘇生を希望していないのであれば、
救急要請や高次医療機関への搬送は極力しないほうが理想的です。カリフォルニアの娘が出てきた
場合には、それが無視できずに今後も問題化されると思います。
因みに米国東海岸の医師はカリフォルニアの娘と言いますが、西海岸の医師はシカゴの娘つまり、
The Daughter from Chicago Syndrome と呼ぶらしいです。