おじいちゃん、それ3回目だよ〜
大学で認知症外来を取り組んでいた時の話です。
「おじいちゃんは、いつも同じことを、いつも同じことを言うんです。何回も何回も・・・」
家族と同伴いただき、家族が捲し立てるように言うと、おじいちゃん(患者)は寂しい顔になります。
買い物に行って財布からお金を出すときはいつもお札で、財布が小銭でパンパンな状態。
なんでもないことに腹を立ててしまい、家人とトラブルが絶えない。2年生なった孫にたいして
「来年から小学校だな、ランドセルを買ってあげる」と何度も話す。そのような状態は、
記憶障害が顕著に出ていて認知症を強く疑う状況です。また易怒性(すぐ怒る)も見受けられます。
認知症と一言で言ってもそんな疾患名はなく、皆さんがよく耳にするアルツハイマー型認知症、
血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などが認知症のカテゴリーに入ります。
認知症の6〜7割近くを占めるアルツハイマー型認知症は、加齢性に進行して、脳細胞の変性が
原因で、脳全般的な萎縮を認めることまた、側頭葉の海馬(記憶の中枢)に強い萎縮を認めることで
どんどんと衰えてしまう病気なのです。そのため、大好きな趣味を取り組まなくなったり、
周囲に無関心になったり、身だしなみにも構わず、簡単な計算や、時間・場所の感覚が
わからなくなったりします。
このような患者さんたちに向き合うと、「嬉しいときは、どんな時ですか?」と訊ねると
皆さんはどんな時を想像するでしょうか?
孫がテストでいい点数を取った時、宝くじが当たった時、美味しいものを食べた時、
いやいや、そんなんじゃないんですよ。家人がいたら素直に教えてくれないのですが、
実は「自分の話をうなずきながら聞いてもらった時」だそうです。切ないですよね・・・
アルツハイマー型認知症は脳の老化と考えても良いと思います。だから、元に戻すことは困難。
周囲の家族の皆様が、温かく接し、何度も聞いた話でもゆっくり聞いてあげてください。
大好きなおじいちゃんであれば、認知症になっても大好きでありたいですね。