スポーツゆえの不整脈
健康診断で脈拍が毎分40台と極端に脈が遅いことと、心臓の上の部屋(心房と言います)からの
不整脈(上室性期外収縮)などの不整脈を指摘された52歳の男性の方がおられました。その方、
全く自覚症状はないのですが、すぐに循環器内科を受診しなさいと紹介され、心房性不整脈に対して
すぐに治療しなさいということになったようです。本人は全く症状なくての話で驚きですよね。
入院を勧められて電気ショック療法を受け、抗不整脈薬による治療もされたようですが全く効き目が
なく、ついにはカテーテルアブレーション治療まで受けられました。施行後も相変わらず再発して
くるのということで、今度は洞不全症候群も疑われるので、ペースメーカーを埋め込みましょうと
言われて、何の症状もないのに、その治療が本当に必要なのかと不安に思い相談されました。
この方、当院での心電図も50分と遅めであるものの1度房室ブロック(電気の流れが遅滞している)
を認めており、左室肥大(全身に血液を送る部屋の筋肉が厚くなっている所見)を示していました。
心臓のエコーで心臓の中を見ると左心房と左心室が正常よりも拡張していて、心電図の通り左心室の
心筋もやや厚くなっていました。これらを合わせて考えると「スポーツ心臓」の状態です。
スポーツ選手はトレーニング効果で自律神経の迷走神経の緊張が高まることで、脈が遅くなり、
他の心房性不整脈も合併します。安静時や就寝中には脈が30回くらいの脈拍数も珍しくはなく、
高度の房室ブロックで3〜4秒間心臓が止まることもあります。ですが、運動を始めるとそれらは
消失して運動に対応して脈も早くなるのです。この方、問診でたった一つのことを聞けば決着がついた
のに〜と思いました。「学生時代、運動していましたか?」この方はお正月のあの箱根駅伝で
レギュラーとして走っていたこともあり、社会人でリタイアした後も趣味で走り続けているのです。
まさに「スポーツ心臓」そのもので、トレーニングをした結果の不整脈だったのです。