2024.03.01

癌よりも怖い骨粗しょう症

北海道に住んでいる母親にはなかなか会う機会がありません。

ですが、会うたびに小さくなっているなと実感します。私は46歳ですので

今更成長して身長が伸びるわけもなく、恐らく母が縮んできているのでしょう。

日本には骨粗鬆症の患者さんが女性980万人、男性300万人おられます。

もちろん高齢者に多く、進行すると簡単に骨折してしまうのですが、骨折した後も悲惨です。

オーストラリアの報告ですが、75歳以上で大腿骨骨折した方の5年生存率は

女性で36.3%、男性で10.2%、7.5年生存率は0人とのことです。

75歳以上なのでそもそも高齢だからバイアス(偏り)はかかっていると思います。

ですが、がん全体で5年生存率が60%にまで改善していることと比較すると、

骨粗しょう症は改めて恐ろしい疾患であることを認識すると思います。

骨粗しょう症はたくさんのクスリがあり、予防も研究されてきていますが、2007年に

「オステオカルシン」という骨芽細胞(骨をつくる細胞)から分泌されるホルモンが発見されました。

オステオカルシンは骨を壊す細胞である破骨細胞のはたらきを抑制し、骨を増やす方向に働くのです。

それだけではなく、動脈硬化を予防したり、記憶機能を回復させたり、糖尿病を防いだり、肝細胞を

活発化させて、さらに男性には精力増強効果があることが突き止められました。

なんとマルチな働きをしてくれるホルモンなのでしょう!まさに「若返りホルモン」です。

そんなホルモンならば、薬であってほしいと願う気持ちは、皆さん一緒だと思います。

ですが、ないんですよー。骨粗鬆症自体を治療するための分子標的薬はあるのですが・・・

実は、オステオカルシンを自力で分泌させるトレーニングがあるのです。

英国で閉経から平均7年経過している淑女の皆さんに骨のトレーニング(かかとに衝撃を与える)

をすると、従来何もしなければ、骨密度は低下するはずなのに防止できたのです。

具体的には東京都健康長寿医療研究センターの大渕先生が紹介している「骨トレ」を参考にして

いただきたいのですが、いたって簡単です。皆さんもすぐに取り組めます。

ジャンプによっては骨粗鬆症がある方は圧迫骨折をする可能性がありますので骨密度を評価して

取り組むことをお勧めします。当院でも検査できますよーーー。

些細な取り組みとまでは言いませんが、いたって簡単な運動でオステオカルシンを増強させて

若返りに取り組んでみてはいかがでしょうか。まさに本日3月から取り組むのが良い機会になることを

祈念しております。がんばりましょう!

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たはむれに 母を背負ひて そのあまり輕きに泣きて 三歩歩まず      

石川 啄木「一握の砂」より