「体の冷え」は風邪の原因になるのか?
外来で「寝冷えして風邪をひきました〜」とか「寒い倉庫の仕事で〜」とか体の冷えが原因で風邪を
退いたとする患者さんが多くいます。でも本当なんでしょうか?医者にとっては風邪の原因は、
ウイルスじゃーんというのが常識です。「寒いところに立たされて体が冷えたから風邪になる」
それは都市伝説でしょうと思っていました。光文社新書の山田恭平さんの「南極で心臓の音は
聞こえるか」には南極での生活が非常に細かく書かれております。59次南極越冬隊の隊員の記録
なのです。それには南極には風邪の原因となるウイルス自体がいないとされています。ただ、
以前ノロウイルスが基地内で流行したことはあったようです。謎!!つまり南極=寒=風邪という
ことにはならないのではないかと、入谷的には勝手に判断させていただきました。
ですが、過去の研究を調べてみると2005年に報告されたもので、年2回くらい風邪をひくという
18歳以上の健康な180人(平均年齢20歳)を対象に行った研究では、10℃の水が入った10Lの
容器に裸足で20分間足をつけて体を冷やすグループと、靴下と靴を履いたままの容器に足を入れる
冷やさないグループとに分けて4〜5日間の風邪の症状についてグループ間に差があるのかを調べた
ものです。結果は実験直後は差がないものの、1日目で少し差がつき、4〜5日経って冷やした
グループの方に鼻水、鼻詰まり、喉の痛み、咳の症状が出てきます。この実験直後は大丈夫で・・・
というのは風邪発症のメカニズムから妥当なものと言えます。つまり、寒さが原因であれば、
実験直後から差が出ます。寒さそのものよりも寒さが引き金となって風邪のウイルスが増殖し、
少し時間が経過したところで症状が出たと考えるのが妥当なのでしょう。風邪の原因となるウイルス
は体に常に取り込まれていて、体は戦っているわけです。症状が出るかどうかは、「気温湿度の環境」
、「ウイルス自体の病原性やウイルス量」、「免疫力」などが関係してきます。風邪をひくための重要な
因子としてはウイルスにあるのではなく、己の免疫なのですね。でも、「体を冷やすと風邪をひく」
というのは都市伝説ではなく、科学的な事実として示されていることがわかりました。