この世をば わが世とぞ思ふ・・・
「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」
この歌は今NHK大河ドラマで賑わせている藤原道長(榎本さん)が三女の威子の立后を記念した
宴で詠んだとされる歌です。一度は聴いたことがありますよね。社会の授業で?
この歌にも現れていますが、平安時代の貴族の頂点に上り詰め栄華を極めた人物なのです。
大河ドラマでは3男なのかと思って見ていたら、実は兼家(段田さん)の5男として生まれ、
26歳で権大納言になり出世街道を直走り、長男道隆(井浦さん)が関白の時に病に倒れ死去、
その7日後に3男の道兼(玉置さん)が疫病で死亡。道隆の長男の伊周(三浦さん)との出世争いを制し
30歳で藤原氏の長者となり、51歳で摂政、52歳で太政大臣に上り詰め、三人の娘を天皇に嫁がせ
権力を振るわせて、藤原氏の全盛期を築いたのです。だから冒頭のような歌を歌ったのですね。
その道長さんが患っていたのは、なんと糖尿病だったのです。
ロバート秋山演じる藤原実資が遺した「小右記」には、道長が51歳ごろから「口が渇きやたら水を
飲むようになった」と書いております。高血糖の症状で細胞が脱水となり、口が渇き、多飲となります。
この実資も天皇の側近の有力貴族だったので、道長のことも「飲水病(糖尿病)」と言い切って
いるのです。冒頭の歌を詠んだ翌日の実資の日記には「道長に目が見えないことを言われた。黄昏時と
真昼の区別なく見えないと言われた」と、道長の視力低下に関する記載もあります。道長自身の遺した
「御堂関白記」にも「二、三尺相去る人の顔も見えず」と書かれていることからもかなり視力障害が出現
していることが伺えます。つまり、糖尿病性網膜症もしくは白内障の悪化が疑われます。
もしかして、道長さん本当のお月様なんて見えないほどの視力低下があったのかもしれませんね。
平安の世にインスリンがあれば・・・900年早かった・・・道長さんも思っているかもしれません。