アルツハイマー予備軍に一筋の光
日本国内では2010年から大塚製薬が販売開始した抗てんかん薬(イーケプラ:レベチラセタム)にアルツハイマー病の進行を止める効果が期待できるかもしれない事がわかりました。ただし、症状が出るずっと前に服用するのが条件とのことです。米国のノースウェスタン大学が2026年2月に発表した研究によると、米食品医薬品局(FDA)が抗てんかん薬として承認したレベチラセタムに、アルツハイマー病の原因となる最も毒性の高いタンパク質の産生を防ぐ効果があるというのです。アルツハイマー病は脳細胞にダメージを与えて記憶や思考を妨げるアミロイドβ(Aβ)というタンパク質が蓄積して老人斑ができます。現在の治療の多くは既存の老人班の除去に焦点を当てていますが、今回の研究ではAβの産生、プロセスとその阻止を突き止めたことが素晴らしいのです。ダウン症患者は若年型で進行の速いアルツハイマー病の発症率が非常に高い事が知られています。ダウン症患者さんの95%以上が、アミロイド産生に関係する遺伝子の過剰複製が原因で40歳ごろまでにアルツハイマー病を患います。全ての対象で毒性の強いAβ42がニューロン(神経の単位)のシナプス小胞(神経伝達物質が入っている袋)に蓄積していたのです。今流行りの抗認知症薬の新薬であるレカネマブやドナネマブは既存の老人斑を除去する薬として承認されていますが、レベチラセタムは神経情報伝達中にシナプス小胞タンパク質に結合して再利用するのを遅らせて、アミロイド前駆体タンパク質(Aβ42に切断されて毒性の高いAβになるもとのタンパク質)を細胞の表面に長くとどまらせます。アミロイド前駆体タンパク質は特定の経路を通る過程で切断されてAβ42を形成する可能性が高いのです。このAβ42は固まりやすい性質がありそのため脳で老人斑となるのです。レベチラセタムはアミロイド前駆体タンパク質をその経路から遠ざけて有害なAβ42の生成を完全に阻止できるのです。一般に30〜50代の脳では有害な経路を回避できると言われていますが、歳を重ねるうちに防御力は次第に弱まっていくのです。これが老化なのかもしれません。ですが、アルツハイマー型認知症の患者脳では多くのニューロンが迷走しており、Aβ42が産生されます。それがタウタンパク質のもつれになって、細胞が死に、認知症を発症し、神経炎症が起きて手遅れになるのです。すでに発症している患者さんの場合は脳が広範囲で取り返しのつかないダメージを受けているので効果は期待できません。検査で異常が検出できる20年異常前ほどの超早期に服用ができていれば、遺伝性のアルツハイマー病やダウン症など、既知の高リスク群に最も有効である可能性が高いとされています。米国の国立アルツハイマー病調整センターの臨床データを分析してレベチラセタムの服用で認知機能の低下が始まってから死に至るまでの期間が平均数年伸びることを発見したのです。ただし、レベチラセタムも体内での分解が早いので「完璧ではない」としてより長期的かつ効果的な改良版を開発中とのことです。まさに、認知症治療に一筋の光かもしれませんね。
* 本日の話題は研究レベルです。日本では予防薬にレベチラセタムを投与薬としてまだ未承認の状況です。