2026.04.02

フレンチパラドックス

以前、といっても30年ほど前私が医学生をしている頃の話題ですが、フレンチパラドックスという言葉が流行ったことがあります。血圧も血中コレステロールも喫煙率も大きな違いはないのに、フランス人の心筋梗塞死亡率が他の西ヨーロッパ諸国の人たち、特にイギリス人よりも低いことを表現した言葉です。理由としてはワイン、特に赤ワインのポリフェノールが一躍注目を浴びたのです。動脈硬化を防ぐ働きが、ワインポリフェノールにあるのは間違い無いのですが、他の種類のお酒を飲む人たちよりも健康意識が高くて、牛肉や豚肉よりも鶏肉、低脂肪乳や低脂肪チーズ、野菜や果物といった心筋梗塞の予防につながる食べ物を豊富に食べていることの方が大きく影響していそうなことがわかってきました。同時期ぐらいに地中海地域の伝統食がさまざまな生活習慣病の予防に働く可能性が明らかになり、地中海食がブームになりました。その後たくさんの研究がなされ地中海食は健康的な食パターンとして世界にほぼ定着したと見て良いと思います。フランス人の研究として食事の時間を集計した研究がさなれています。平日、週末ともに8割以上の人が12時台と13時台に昼食をとっていて、19時台と20時台に夕食をとります。これは食事は〇〇時ごろにとるものだといった共通の考え方(規範)がフランス人にあることを示しています。さらに、15分から45分程度の時間をかけて食事をとっていて、この中で15分から30分の方が多かったので、意外に短いと感じましたが、昼食でも30分近くかけていることから、少なくとも「サッと済ませている」のでは無いことがわかります。最も注目したのは食事を楽しんでいる人たちが7割もいることです。食事が「楽しくない」と答えた人は1%しかいないので、食事を楽しむフランス人らしい勝手な印象にピッタリハマりました(笑)。きちんとした食事を、時間をかけて楽しく食べることが肥満予防につながるとまとめられそうな研究でした。「時間をかけてなんて優雅なこと言うなよ!」と思う方もおられるでしょう。しかし、この研究は収入の違いはなく、教育歴、家族人数、食事や健康意識、食事の環境などの条件を同じと仮定して計算されているのです。つまり、何を食べるか、食べられるかよりも、このような「楽しく時間をかけて食べる」と言う態度や考え方で食べることの大切さを考えることも重要であることが伺えました。ちなみに我々日本人もフランス人にそっくりな食事時刻パターンであることがわかっています。日本人に肥満が少なく心筋梗塞死亡率が低いのは日本人の食べ方のおかげもあるかもしれませんね。