ヘルペスのつづき
昨日は単純疱疹で話が終わりました。実は昨日の話題は書くつもりはなかったのです。笑
ヘルペスという言葉ですが、ギリシャ語のherpein「はう」という語が起源なのです。皮膚の上を
はうように拡大することから皮膚結核や白癬(みずむし)、湿疹など種々の病気が昔はヘルペスと
呼ばれていたようです。
このヘルペスという語を、現在の意味に限定して使用した人がレンブラントの名画で有名な
「テュルプ博士の解剖学講義」のテュルプ博士なのです。全く分からない人はググってもらったら
早いのですが、我々医療人であれば一度や二度は必ず見たことがあります。
魔法使いみたいなおじさんがシャンプーハットみたいな襟をしたオジサン7人に講義している
様子です。恐らく死体の解剖中で左上肢の腱や筋肉、神経などの説明をしているシーンなのでしょう。
レンブラントは17世紀にこの絵を描き上げたのですが、なんだか違和感があり解剖学的に正しいのか
テュルプ博士の解剖が誤っているのか不思議な感じがします(業界用語でいうところの回内して
いるように見えます)。このテュルプ博士は実在する人物ですが、Tulpの名前はあだならしいのです。
オランダの彼の家の前がチューリップの球根の競売所であったために、ドクター・テュルプと呼ばれる
ことになったということです。このテュルプ博士は帯状疱疹を初めて独立した疾患として記載した人
でもあり、帯状疱疹はラテン語でherpes zosterと書きますが、zosterは帯の意味で、疱疹は水疱疹
であるので、帯状疱疹という病名は臨床症状を見事に表現したうまいこと言う病名なのです。ちなみに
昨日の単純疱疹は、herpes simplexからの訳です。
帯状疱疹の原因は水痘ウイルスで、幼児期に罹患した水痘ウイルスが、潜伏していて神経に沿って
小水疱の集団をつくり、はうように拡大して特に、高齢者の方はその後の神経痛に悩まされることで
有名です。第二次世界大戦時の海軍大臣の米内光正、画家で詩人の竹久夢二も帯状疱疹後の疼痛に
悩まされたと記録に残っています。