世界最強のボツリヌス毒
昨日に続いて毒の話です。毒の勉強って医学部では習わないのですが、ムスカリン、アセチルコリンなどは薬理学という授業で習ったような気がします。毒キノコに含まれるアルカロイドの一種であるムスカリンは、タバコのニコチンと同様に筋肉の収縮を引き起こす作用があります。筋肉を動かしている運動神経から放出される神経伝達物質はアセチルコリンですが、ムスカリンはアセチルコリンを受け取る受容体を活性化する作用があるので筋肉の収縮を引き起こすのです。ムスカリンによって動作するのでこの受容体をムスカリン受容体と呼びますが、致死量を摂取すると筋肉が収縮し続けて呼吸困難、心停止となります。チョウセンアサガオの成分であるアトロピンと呼ばれるアルカロイドは、逆にムスカリン受容体をブロックする作用があります。つまり筋肉の収縮ではなくて「だら〜ん」としてしまう筋弛緩を起こすのです。これも致死量を摂取すると死に至る劇薬なのです。眼科で眼底検査をする際に瞳孔を散大させる時に使う点眼液がごく薄いアトロピンです。瞳孔の動きを制御している筋肉を弛緩させるのです。今日の話題はボツリヌス菌です。ボツリヌス菌が産生する神経毒は、神経から筋肉へのアセチルコリン放出を阻害して筋肉を麻痺させる作用(弛緩性麻痺)があります。この神経毒ですが、殺傷能力が、1gで100万人とも1000万人とも言われています。恐ろしい菌です。ハチミツに微量含まれているので1歳未満のお子さんには食べさせてはいけないというのは、ボツリヌス菌が芽胞として体内に侵入してしまうと、大人の腸では他の菌に抑えられるのですが、未熟な乳児の腸内環境では芽胞が増殖して、麻痺や呼吸困難を起こす可能性があり、稀に命に関わるために1歳未満に与えてはいけないことになっているのです。また、このボツリヌス菌を弱毒化して、硬直した筋肉に投与することで、筋肉の張りを除く、ボトックス治療も普及しています。我々が口にするお薬の多くは、神経や筋肉の受容体を標的にしています。脳は化学物質の非常に微妙なバランスで成り立っていますので、麻薬や向精神薬と言われる薬は直接脳に作用して、精神機能に影響を与えるのです。