喫煙とストレス
昨年11月に学校医のお仕事をさせていただいている中学校で薬物乱用と受動喫煙のお話を
させていただきました。お話を聞いてくれたのは中学2年生。予想以上に話を聞いてくれたので
おじさんは大変うれしかったです(笑)。
話の趣旨は、受動喫煙(タバコを吸っている人以外の吸わされている喫煙)は能動喫煙よりも
タバコの煙(有害物質)をフィルターを通さずにもろに吸い込んでしまうことがよろしくないこと。
また、吸い込むという行為が違法薬物のとっかかりになってしまうことが多いケースがあるということ。
決して明るい話題ではないのですが、興味を持って聞いてもらうために話題を考えました。
お父さん、お母さんが家でタバコを吸っている人、手を挙げて!と尋ねると4割程度の子たちが
手を挙げていました。健康によくないと思いながら、ヒトはなぜ喫煙してしまうのでしょう?
「タバコを吸うとストレスが解消される」という人がいます。ストレスを解消できると感じるのは
ニコチンが引き起こす錯覚なのですが・・・たしかに喫煙により多幸感や満足感をもたらすドパミンが
放出され、30分ほどでニコチン濃度が低下しイライラ感とソワソワ感を自覚します。これは
欠乏症状であり、喫煙によって解消されるストレスの本質は「ニコチンの禁断症状」なのです。
だから、喫煙をやめることでストレスが軽くなったと報告した研究もあります。
加熱式タバコだから「害が少ないよ」とか「禁煙に役立つんだ」と外来でお話になる方もいらっしゃいます。
2019年に日本呼吸器学会が出した見解と提言は以下の通りです。
1.加熱式タバコが産生するエアロゾルには有害成分が含まれており、健康への影響が不明のまま販売
されることは問題である。また、加熱式タバコが紙巻きタバコより健康リスクが低いという証拠はなく、
いかなる目的であってもその喫煙は推奨されない。
2.加熱式タバコの使用者の呼気には有害成分が含まれており、喫煙者だけでなく、他者にも健康被害
を起こす可能性が高い。
つまり、学会も推奨しないのです。もちろんですが・・・
今一度、高価なタバコを吸って健康状態をあえて悪化させるのか考えてみる時期なのかもしれません。