声が出ない
患者さんに相談された事がある内容です。暑い夏の日のこと、お出かけ中の車内で
1時間ほど眠ってしまった。車内はエアコンが効いていて気持ちが良かったし、疲れていた
のでぐっすりと眠ってしまったそうです。目的地の近くで目を覚まして同情している家族に
話しかけようとしたところ全く声が出てこない。こんなことは未だ経験した事がなく、水でも
飲めば治るのではないかと思って自動販売機でミネラルウォーターを購入して飲んでも効果なし。
近くの耳鼻咽喉科で診てもらったところ、声帯が麻痺しているとの事だったようです。その医師は
大きく口を開けて眠っていたので、声帯が冷たい空気に長時間さらされて麻痺をおこしたのでは
ないかとの事でした。声帯麻痺は一時的なもので早晩治るでしょうとの事でした。声掠れの原因は
声帯ポリープ(カラオケポリープとも言われる)、ポリープ様声帯、声帯結節などがあります。
この患者さんは内科の病気が無いか(ダジャレではありません)と心配されてこられたのです。
声帯の動きを司るのは反回神経で、この神経が何かに圧迫されると声帯麻痺を生じます。中でも、
甲状腺がん、食道がん、縦隔腫瘍、気管支がん、肺がん、大動脈瘤、急性心不全などがあります。
心臓外科医をしていた時には大動脈瘤で左反回神経麻痺をきたししわがれ声になっている人をよく
診ていました。興味深い方では、心臓の弁の一つ僧帽弁狭窄症という疾患のために左房が大きく
なっている方がいました。調子が良い時は不整脈がなく左房を拡大する事なく反回神経にも影響は
なかったのですが、不整脈が顕著になると左房がパンパンに拡張して反回神経を圧迫させてしまう
ことで声のカスレが生じるという方がおいでました。僧帽弁の置換術を行い左房が拡張しなくなった
のでこの方は、いつも澄んだ声をしていられるようになりました。風邪でもこのような経験がある
方もおいでます。風邪をひいているわけでも無いのに声がカスれるのならば一度受診をお勧めします。