天神さまの細道じゃ
平安時代の菅原道真(すがわらのみちざね)をご存知でしょうか。
学者出身で右大臣にまでのぼりつめながら、無実の罪で九州の太宰府に流された人です。
ことの始まりは宇多天皇と藤原基経とのいざこざで、菅原道真が揉め事を解決し、手腕が
認められることで蔵人頭、参議・中納言、右大臣へと破格の出世階段を上り詰めていました。
ですが、いつの時代も色と金と妬みが絡みあるのが世の中で、藤原氏の嫉妬を浴び、無実の罪を
着せられて太宰府に左遷されてしまったのでした。太宰府の配所はひさしが傾き、雨漏りのする古びた
館であり、自由に出歩く事もできず、食物も不足しがちな毎日だったようです。京都のことを思うとい
まさに断腸の思いだったことでしょう。失意の中、流されて2年後に59歳で亡くなってしまうのです。
普通の神経をしていたらメチャクチャ怒りますよね?でも教養人はそんなみっともないことは致しません
「私は無実だ!」とか「早く京都に返してくれよ!!」とか声に出さずに怒りを感じながらも
前頭葉(脳)で制御していたのでしょう。道真の死後、天変地異が相次いで、清涼殿に落雷があり、
無実の罪を着せた右大臣藤原時平は病死、仏門に入った醍醐天皇も崩御されました。この一連の出来事は
道真の怨霊が祟ったに違いないと怨霊封じ、霊廟を建立したり、亡くなってから太政大臣の位を贈ったり
鎮魂をはかったのでした。いわゆる天神様と言われるのは菅原道真のことですが、北野天満宮にある
天神絵巻で雷神たちが暴れ回る姿はいわゆる爆発反応というものです。じわじわと怒りが溜まって
ある日プツンと突然キレて凄まじい暴力に走ってしまう反応のことを言います。
逆上して怒りの感情が頂点に達すれば副腎髄質より多量のアドレナリンが湧出します。アドレナリンは
一瞬にして全身を駆け巡って、血圧上昇、心臓が高鳴り、呼吸は促迫します。まさにキレた時を
ご想像ください。学者の菅原道真も怨霊になってからキレたのかもしれません。わかりません。
我々現代人も怒り心頭に発する出来事に満ちています。誰もが爆発反応を起こしかねません。
ブチギレたくなった時こそ、天神絵巻を見て、怒りを一気に放出するユーモラスな雷神を
見つめていると、知らず知らずに平気な気持ちが戻ってきます。
これこそが菅原道真が我々に求めていたことなのでしょうか・・・