2026.05.10

敵は食の道にあり

新緑の木々の間を通り抜けてきた風が体に触れると、まるで柔らかな何かで肌がくすぐられているような感じがします。この風は、春の風と夏の風を四分六に混ぜ合わせたような、そんな風に感じます。過ぎ去ってしまった冬、寒い風に向かって歩き出すと、決まって胸の痛みを訴えていた患者さんが、「この頃はどんなに風が強く吹いているところを歩き回っても、胸は全然痛くならない」と喜んでいます。確かに毎年今頃の季節になると心疾患特に狭心痛を訴える患者さんはグッと減る気がします。暖かい季節がそうさせると思います。ところで、この狭心痛と極めて類似した共通を生じる病気がいろいろあります。中でも、びまん性食道けいれん症と言う病気は、胸が締め付けられるように痛み、それが胸から左の腕、肩、顎に放散します。この病気は食道全体が同時にけいれんを起こすもので、そのけいれんに伴って痛みが起こるのです。痛みは食後に起こることが多いのですが、食事との関連を認めないこともあります。厄介なことに、この病気はけいれん性の病気なので、ニトログリセリンやカルシウム拮抗薬のような狭心症治療薬が効果を示します。こうなると、本物の狭心症と区別がつきにくくなります。それでも、このびまん性食道けいれん症の場合の胸痛には、狭心症と異なる特徴があるのです。①背中への放散痛があること、②ニトログリセンリンが効くまでに比較的長い時間(通常10分以上)がかかること、③食事によって誘発される場合は、冷たいものや熱いものを食べたときに起こりやすいこと、などが普通の狭心痛とは異なる点です。逆流性食道炎でも狭心痛と似た胸痛をを生じます。普通はこの病気では、痛みは炎症によって起こり、”胸焼け”として自覚されるので、まず狭心痛と間違われることはありません。ですが、食道の絵炎症部位に胃液が逆流してくると、食道のけいれんが起きます。この場合もびまん性食道けいれん症とお同じ状態になり、狭心症様の痛みを生じることになります。しょっちゅう胸焼けがあって、時々胸痛を強く認めるような場合は逆流性食道炎の可能性が高いのです。敵(胸痛)は心の臓にあらずして、食の道にあり!と言うケースも意外と多いのです。もしかしたらと心配になる方はご相談ください。まずは心の臓をチェックして心配ないことを確認してから、消化器の検査を受けることをお勧めします。