明日の記憶
荻原浩さんの小説で「明日の記憶」という作品があります。若年性アルツハイマー型認知症を
患うサラリーマンの物語です。この作品私は先に小説で読みその後2006年に渡辺謙さんが主演
で映画化されていることを知り映画を見たのですが、アルツハイマー型認知症の発症経過や
診察場面がよく描かれているなと思いました。へ〜と思ったのは発症した主人公が自身の
症状を一般家庭向けの医学書で調べて「うつ病」と自己診断する場面があります。抑うつ症状は
アルツハイマー型認知症ばかりではなく、4大認知症の一つであるレビー小体型認知症などの
他の認知症の初期にも見られる症状なのです。さらに、主人公は同じ整髪料をなん度も繰り返して
購入してしまい、妻(樋口可南子)から専門医の受診を勧められます。買ったことを忘れてしまう
ようなもの忘れは認知症の前段階でもよく見られる症状です。受診した神経内科医のもの忘れ検査
では、暗算の場面で「100から7を引いて」の答えを93と確認した後に「そこから7を引いて」と
続けています。ここが重要で「93から7を引いて」というと1つ目の暗算の答えである「93」を
記憶させる作業が検査できなくなってしまうのです。これは実は、できない医者がいるのも事実。
細かいことですが、限られた時間、項目で最大限に記憶の検査をしようとすると1つ1つが大事
なのです。この映画日常診療が適切に描出されていますが、アルツハイマー型認知症の診断を告知
する場面でMRI画像が出ますが、側頭葉の海馬が萎縮し過ぎているのです。初期段階としては
あまりそぐわない画像所見ですが、SPECT(脳血流シンチ)では後部帯状回の血流が低下している
ことを指摘されていて秀逸だなと思いました。ぜひ、皆さん映画or小説で見てください。
荻原浩さんの『海馬の尻尾』という脳科学小説もおすすめですよ〜