梅を眺めると…
陰暦の二月を如月と言います。梅見月とも言われる事があり、梅は代表的な二月の花という事ができます。ふくいくとした香りを漂わせている梅の花を愛でながらも、きっと医療関係者は性病の梅毒と梅にどんな関連があるのだろうと考えているのではないかと思うのです。小川鼎三(ていぞう)博士の著した医学用語の起り(東京書籍)によると梅毒の梅は当て字であの梅とは無関係なのです。コロンブスが新大陸を発見して、ヨーロッパに持ち帰ったありがたくないお土産に、タバコと梅毒がありました。アメリカ大陸の発見後、わずか10年ほどで梅毒は中国の広東に上陸し、その後さらに10年で日本に伝わり流行を起こしました。梅毒のことを中国では広東瘡または楊梅瘡と名付けられたのです。その後、楊の字が略されて梅瘡と呼ばれるようになり、それが梅毒と変わったようです。梅毒とは梅にとっては名誉毀損にもなりかね無い病名ですよね。梅毒は、トレポネーマ・パリドゥムという原虫による感染症で、性交で感染する事が最も多く、キスでも感染する事があります。梅毒はⅠ〜Ⅲ気に分けられ、Ⅰ期は感染の機会があってから1〜7週間後に、感染部にしこり(硬結)ができて、その後潰瘍となって数週間で自然治癒します。また、感染部位に近いリンパ節が固く腫れてきます。Ⅱ期は感染後平均3ヶ月から3年くらいまでで、原虫がリンパ節から飛び出して全身に散らばります。このため発熱、全身のだるさ、発疹などが出てきます。陰部には扁平コンジローマと呼ばれる白く浮き上がったような梅毒疹が見られます。このⅡ期の間が一番感染させやすい危険な時期でもあります。Ⅲ期は感染後3年以上経過した時期で、皮膚や粘膜にゴム種という大きな腫瘍ができます。また、10年以上ともなると角膜実質炎、心臓弁膜症、大動脈瘤、脊髄癆、進行性麻痺(俗にいう脳梅毒)なども出てきます。本当に多彩な症状が出ることで診断が逆に困難となるのです。一夜の快楽の代価としては、梅毒はあまりに高すぎます。梅は眺めるもので、身につけるものではありません。