沈黙の臓器との対話
高校生の時にNHKブックスから出版されていた「沈黙の臓器と語る」という旭川医大の第2外科
の教授水戸迪郎先生が執筆された書籍を読みました。人工肝臓や部分肝臓移植などの黎明期から
今に至る歴史をわかりやすく紐解いている書籍でした。高校生の時なのでまさか自分がお世話になる
第一外科のお隣の教授が書いた本とは知らずに人工臓器の研究はやっぱりおもろいな〜と思った記憶
しかありません。この肝臓、なかなか頑張り屋さんで病気があっても「いよいよ悪化」という段階に
なるまで症状が出てくることが少ない臓器と言われています。だからこそ、定期の健康診断を活用して
少しでも予兆を確認しておくべきなのです。肝臓の健診で調べる項目はAST (GOT)、ALT(GPT)、
γーGTPが必須とされています。肝臓の機能を考えるとごく一部の項目なのですが、いずれも優秀です。
AST ,ALTはトランスアミナーゼと呼ばれて肝臓に存在する酵素です。肝臓が何かの影響で破壊されると
血液中に増加します。基準値はAST:10〜35IU、ALT:5~40IUとされています。ASTが上昇するのは
ウイルス性肝炎が多く、ALTの上昇は脂肪肝、薬物性肝硬変、自己免疫性疾患など多彩な病気が隠れて
います。γ-GTPはアルコール性に上昇する数値ということは皆さんご存知かもしれません。
でも、それだけではなく胆嚢や胆道と言われる胆汁の流れる部分の詰まりや鬱滞によって上昇することも
あるのです。中にはガンで胆道が圧迫されていることもあります。すべて酒のせいにしてはダメです。
ゆっくりと進行してやがては、肝硬変や発癌といった大きな健康障害に結びつくのです。異常値を放置
するのではなく精密検査を受けてみることをお勧めします。実際に症状が出てからでは、早期に発見
できた時と比較すると治療効果が減少してしまいます。病気を未然に防ぐことも当然大事なのですが、
早期発見はもっと重要であると思います。すこやか健診ぜひ受けてみてはいかがでしょうか。