漢方と副作用

「漢方には副作用がないって聞くけど、安心ですよね?」
「副作用が怖いので漢方を処方してくれませんか?」ってな感じのことを主治医に言ってませんか?
確かに、漢方は「自然界に存在する動植物、もしくはその一部を元にして生成した生薬を何千年という
年月をかけてどう組み合わせると、どんな効果が出るのかを、また危ない副作用がないかどうかを、
何度も何度も確かめられてまとめられたお薬」なのです。つまり、過去の人の経験によって体系化
された経験によるデータの集積なのです。ものすごいスピードで発達する医学や医療とそりに伴って
発見される病気や症状に、これからも「過去の経験則」が通用するかどうかはわかりません。ですので
「漢方だから副作用がない」というウマイ話はないと思ってください。
私はこう見えてかなり慎重なところもあります。それは、患者さんに副作用を経験させてしまったことが
あるからです。認知症の患者さんで怒りっぽくなる方、イライラして周囲に当たり散らすなどで家族が
お困りだったので、抑肝散という漢方を処方しました。効果は抜群!最高な切れ味で家族にも感謝され
たのですが、儀性アルドステロン症という多くの漢方に含まれる「甘草」の主成分であるグリチルリチン
が、腎臓の尿細管という部分に働きかけて、ナトリウムの再吸収を促進させて、カリウムの排泄を増やす
ので、高血圧、低カリウム血症、手足のしびれ、四肢脱力、筋肉痛、全身倦怠感などを引き起こして
しまう副作用が出る人には出るのです。なんじゃそれ?と思った方は、要するに「漢方にも副作用が
ありますよ~」ということなのです。自然界にある生薬の集合体なのになんで副作用?と思った方、
トリカブト、毒キノコ、フグ(肝)、サソリもまちがいなく自然界由来なのですが、毒そのものです。
自然=安全というのはあくまで神話であって、今後何十年もかけてデータを撮り続けたら人工の薬の方が
安全になるかもしれませんね。副作用という悪魔は薬にどこまでも付きまとってしまうことを忘れずに!