2025.08.14

白き旅立ち

今日の話題は美幾女解剖です。私は高校生の時に渡辺淳一の小説「白き旅立ち」で知りました。

美幾さんは江戸時代末期の人で、家庭の貧しさゆえに10代で遊郭に身売りされて、遊女として

生きる事を強いられます。28歳で年季が明けた後も美幾は遊郭に留まるのですが、すでに結核に

おかされるのですが、尾張藩の武士、宇都宮紘之進(三郎)に可愛がられ、幸せに浸る時間が

あります。実際には宇都宮三郎さんは抜きん出た化学者で、セメントの製造法を発見したり、藍の

製法を考えたりと幾つもの化学的な業績を残された方ですが、小説では大砲の研究者として

描かれます。長州征伐に加わった後、ヨロケ病にかかり長い間足腰も立たない状態で床に伏せる

紘之進でしたが、美幾の病状を察しかつての蘭学の教え子の滝川長安に手紙を託して、小石川養生所

への入所が叶います。今の東大病院ですね。この小説では、美幾が死後の解剖を望んだのは、

紘之進も自ら解剖願いを出したことと併せて、小石川養生所で親身に治療をしてくれた長安への

熱い思いと恩返しとして描かれています。実際のところ、結核ではなく梅毒で亡くなっている

のですが、ここが渡辺マジックですね。8月12日に34歳で没し、8月14日に下谷泉橋通りの医学校

に併設された仮小屋で解剖に付されております。この解剖篤志解剖であれば本人の申し出により

無償で行われるのですが、家族側は解剖を仰せ付けられたとして、医学校側が持ち出している

ことになっており、篤志解剖ではなく特志解剖となっている。金十両が兄の和助に渡されている。

これが美幾の最後の親孝行であったのだろうと思うと、なんだか切ないですね。

機会があればぜひご一読を!吉村昭さんの「梅の刺青」もおすすめです。