脳内麻薬に気をつけろ!
野口悠紀雄の脳内革命が流行っていた時期もありました。結局のところどんな内容なのかは忘れてしまいました。でもすごいベストセラーでびっくりしたことを思い出しました。さて、今日の話題は革命ではなく、麻薬の話です。ニコチンは肺から吸収されるとなんと15秒で脳に到達するのです。そしてドパミンの分泌を促して、高揚感を生み出すのです。長期的にニコチンにさらされる状況が続けば、それに対応するためにドパミンを受け取る受容体の数を増やしていきます。この状態で突然禁煙してニコチンの血中濃度レベルが下がると、ドパミン量も下がってしまいますが、受容体の数はそのままなのです。バランスが崩れて頭痛や不快感など様々な不調を引き起こすのですが、これを俗にいう「禁断症状」なのです。この禁断症状を緩和するために、たまらずまた禁煙を破ってしまう事がよくあります。喫煙者の約75%が禁煙を試みた経験があるようですが、大半が失敗に終わっているのです。お薬もあるのですが、私が開業する際にはほとんど手に入らないとの情報から、あえて禁煙外来をする選択肢を捨ててしまいました。でも、外来で禁煙外来してくれないのですか?と何度も尋ねられました。でもみなさん、安心してください!ほとんどの方は失敗するのです。当院に通院中の患者さんで禁煙に成功した方は数多くおられますが、伺っていると、特殊な薬を飲んだり行動を変えたりしたということはないようです。では、なぜ禁煙がうまくいったのか?その答えは「気合い」だけです。私もこう見えて以前は喫煙していました。格好良く見せるためだったのかもしれませんね(笑)。現在、禁煙治療は様々な方法で試行錯誤されていますが、台湾の研究ではニコチン依存症の710名を対象に非侵襲的脳刺激法の効果を比較検討したのです。その結果は、左おでこの内側の脳部位を時期によって活性化した場合に禁煙効果が最も高まる事が判明しました。この脳領域の刺激はやる気や集中力を発揮する際に活性化するようで、うつ病の緩和にも用いられています。この磁気刺激ではドパミンの放出を増加させるのですが、ドパミン受容体増えてしまった状態でいきなりゼロにすると苦痛が生じるので、ドパミン量を調節しながら需要谷の数が元に戻るのを待つのだと考えられます。禁煙の欲求はニコチンの依存症という薄っぺらい問題ではなく、実は複合的な行動嗜癖でもあるので、これをやれば絶対やめられるということはありません。意外と難しい禁煙なのです。