腕を縛って心筋梗塞を治療!?
数年前から筋トレが我々中年男性の間で流行しているようです。私は全く行こうとしたこともありませんが、患者さんと話をしているうちになんとなく憧れがあります。この後、ジム行くんですとか、今日はジム行ってきたんです!みたいな感じで行ってみたい憧れがあります。現実は休みの日に晴れていたら子供とポンポン、銀河ちゃん、大和くんと散歩に行くのが何よりの運動になっています。ましてや筋トレなんて・・・まさに憧れです。皆さんは耳にした事があるでしょうか?加圧トレーニングというものを。どこでもできるのか、決まったジムでなくてはできないのかすら把握していないのですが、加圧トレーニングは、「四肢の付け根を縛って血流を制限したまま負荷をかけることで、骨格筋の成長を促進させて筋力増強ができる」というものです。比較的弱い負荷であっても大きな効果があると言われ、実際に病院のリハビリテーションでも導入されています。メカニズムはまだ確かではないのですが、成長ホルモンを誘導する、嫌気性環境で産生されたラジカルやプロトン、乳酸が筋肉増強のシグナルを誘導するなど様々な説が提唱されています。この加圧トレーニングは、手足の血流を制限する事で、縛った手足に対する直接の効果を見ているわけです。一方で、「腕を縛って血流を再開させる操作を繰り返すことによって心筋梗塞や脳虚血の予後が良くなる」という遠隔虚血プレコンディショニング(remote ischemic preconditioning:RIP)という現象があります。具体的には、通常の血圧を測定するカフ(シュポシュポして締め付けるアレです)で「5分腕を縛って5分解放する、これを4回繰り返す」という方法で、デンマークで333人の心筋梗塞の患者さんにこの方法が試されて、有意に心筋梗塞の範囲が減少する事が示されました。この他にも、バイパス術の成績や脳虚血にも効果がある事が示されています。メカニズムには諸説ありますが、手足を縛ったり緩めたりする事で、血管拡張作用のある生理活性物質が増えたり、赤血球を増やすエリスロポエチンが増加するためとも言われます。ところが2019年にLancetから夢のようなRIP現象を否定する論文も発表されました。「腕を縛る」という簡単かつ非信州的な方法で一定の硬貨が多く発表されているのは事実なのですから、意味がないと結論づけるのは安直すぎるかもしれません。身体が虚血などの状況に反応して、来るべき災難に対して準備をしているという考え方には理解ができます。