2026.01.28

虫垂は無用の長物!?

虫垂炎はいつになっても、何例見ても自信を持って外科に紹介できないな〜と思ってしまいます。私的には奥が深いのです。元外科医なので虫垂炎の手術はしてきました。ただ、内科が診断したものを自信を持って手術をするわけなので画像は見るものの、あ〜手術やりどきね〜みたいな感じで手術をしてきたのでしょう。今になって腹部症状(腹痛、所見がはっきりしないもの)を訴えて来院され、血液検査、腹部エコー、CTをした際に違和感があるものの確信を得られないこともあるのです。私の場合迷ったら外科に診ていただくことが先決だと思っています。この虫垂は、生理機能がなくて退化した痕跡の臓器と言われてきました。外科医は昔から虫垂切除に抵抗感なく、開腹したついでに以上のない虫垂を切除した例もあったようです。ところが最近になって虫垂の働きが意外にも重要であることがわかってきたのです。腸内の正常細菌叢が破壊されて毒性の高い細菌が増殖した偽膜性腸炎と言う病気がありますが、虫垂切除後の患者さんは切除していない患者と比較して偽膜性腸炎の頻度が高いと言う報告があります。大阪大学のチームはマウスに虫垂切除することで大腸の腸内細菌叢のバランスが崩れることが明らかになりました。さらに、同じ研究で虫垂がないマウスは腸内細菌叢を維持して腸管免疫で重要な働きを担うIgA交代が減少していたのです。これから虫垂にあるリンパ組織が大腸に動員されるIgA陽性細胞を産生する場であることがわかったのです。一方で、虫垂切除をすることで潰瘍性大腸炎が改善した患者さんの報告もあります。潰瘍性大腸炎の患者さんの虫垂には免疫細胞間の反応更新を促すリンパ球が多いこともわかっています。実際の臨床では虫垂切除と偽膜性腸炎は関係がなかったと言う報告もあり、虫垂の善悪には決着がついていないようです。これまでに散々行われてきた虫垂切除ですが、虫垂の役割がようやく今になって解明され始めていることにも医学の深さと驚きを感じます。