2026.03.04

観臓記念日

故緒方富雄東大名誉教授(血清学、医史学の権威)の著書に「科学随想三月四日」という1973年に出版された書籍があります。緒方先生の誕生日かなんかなのかな〜と思って、興味があるのでAmazonで購入したのですが、「三月四日などといっても、自分にはなんの関わりもないとおもわれるかも知れない。しかし、そうはいわせない。いまからちょうど百八十五年前の明和八年(一七七一年」三月四日といえば、杉田玄白や前野良沢たちが、江戸の千住小塚原で、五十歳ばかりの女の、死刑になった死体の「ふわけ」を見た日である」。つまり日本人が今日から255年前の今日、初めて人体の中を解剖で見たという日なのです。杉田玄白・前野良沢らは「ターヘルアナトミア」の正確さに打たれて、早速翌日から翻訳に取り掛かったのですが、舵のない船で大海に乗り出したかのようだったと思います。以前このブログでターヘルアナトミアを解体新書に訳した話を取り上げています(2025年9月6日)。取り掛かって4年目の安永三年(一七七四年)には、解体新書全四巻が出来上がったのです。驚くべきことであります。辞書だってないんですよ〜すごくないですか?「だからこそ、三月四日は、わたしたち医学、科学の人間にとって、なにより、大事な記念日なのである。同時に日本の誰彼をとわず、みんなにとっても、記念すべき日だとおもうのである。なぜなら、日本人はみんな、この三月四日のおかげを受けているから」。と記述されている。小塚原は西の鈴ヶ森刑場と並んで江戸幕府の処刑場で、寛永7年(1667年)に置かれた本所の回向院の分院が今の小塚原回向院。その境内に大正11年(1922年)に建てられた「觀臓記念碑」の「解体新書」の絵扉を模った浮彫青銅版だけが保存されて、新しい記念碑の一部になっています。地図で見ると小塚原処刑場の跡って回向院が立っている場所だとおもうのですが、これから常磐線、上野東京ライン、つくばエクスプレスに乗るときはありがたい気持ちで黙祷を捧げます。ちなみに本日のサムネイル画像は杉田玄白さんです。