2025.08.19

1型糖尿病考

皆さんに色々な病気のこと、医療のことをわかりやすくお伝えしてきたつもりですが、私は今まで

1型糖尿病のことはあまり語っておりません。なぜか?専門医でもなければ多くの患者さんを診察

しているとは言い難いからです。多くって何人?個人的には今まで100人以上くらいは診ていたらなぁ

と思います。皆さんの多くが心配しているのは生活習慣病の2型糖尿病の方ですね。

1型糖尿病は、膵臓の中のインスリンを作る細胞(ランゲルハンス島のβ細胞)がウイルス感染、

自己免疫などによって、ダメージを受けることで発症するのです。この1型糖尿病は15歳未満の

若い人に多いのが特徴です。糖尿病全体の3%を占めていると言われています。つまりレアなのです。

かつて、と言っても大昔ですが、患者さんは短期間(半年以内)で急激に悪化し死に至る病でした。

インスリンが発見されて以来、1型糖尿病の患者さんはインスリンを注射しながら普通に生活して、

活躍しているのです。

ニコール・ジョンソンは、19歳の時にミス・フロリダの予選会場で突然倒れました。病院に搬送され、

血糖値を測定すると509mg/dlと高血糖であり、周囲の人は、ミス・アメリカに出場するのは無理と

言いましたが、彼女は1型糖尿病を隠すこともなくチャレンジし、1999年のミス・アメリカに選ばれた

のです。彼女は以後、ミス・アメリカの知名度をフルに使い糖尿病の理解を深める活動をしています。

さらには、2010年のミス・カルフォルニアUSAにも選ばれ、2015年には競泳のマイケル・フェルプス

と結婚されています。

スポーツ界でもちょっと古いですが、私の小学生の頃活躍していた長嶋巨人軍でピッチャーをしていた

新浦壽夫選手も1型糖尿病で、1988~89年の2年間に巨人軍で活躍し合計21勝を挙げた

ビル・ガリクソンも同じ病気を抱えながら、米国に帰国後もメジャーリーグで20勝投手に

なっています。そのガリクソンに刺激を受けて、阪神の岩田稔選手は2006年から2021年までの

16年間に200試合に登板し、60勝をあげています。この人のすごいのは、1勝挙げるごとに10万円を

1型糖尿病の研究基金に寄付していたことです。このように活躍している人がたくさんいるのですが、

病気の理解が進まないのが問題です。本人の同意を得てブログに書かせていただきますが、

就職の際に既往歴に「1型糖尿病」と書いていたらその面接官に、

「糖尿病~~??、だらしない生活しているから、そんなことになるんだよ~」と言われて、

とても悔しい思いをしたと涙ながらに話してくれました。私は聞いていて、その会社にイラっとして

余程クレームをつけてやろうと思いましたが、その子が言うには、でもその会社はその程度の知識しか

持ち合わせていない。まして、会社の顔となる人がそのレベルだとういうことに呆れたそうです。

私に話しているうちに彼女は落ち着き、私が逆に怒り絶頂になりましたが、先生、落ち着いて!と

窘められました。そこで、ニコール・ジョンソンの話をしたのです。

そうしたら満面の笑みで帰りました。私はしつこいのでまだイライラしていましたが・・・

なんと、数年後まさか、その彼女がミス○○になろうとは私は思っても見ませんでした。