5月病?
5月病とは皆さんもよく耳にしたことがある言葉だと思います。
もちろん、正式な疾患名(病名)ではなくて俗称です。
激しい入学試験にパスしてやっと大学に合格した新入生や
数年にわたる就職活動の努力が実り入社したフレッシャーズの方々が、
ゴールデンウィーク明け頃に無気力な状態になることから名付けられました。
具体的な症状としては、やる気が出ない、根気がない、何をするにも億劫、
将来の目標や進路の喪失感、不登校や出社拒否などの精神症状から、感冒症状、
下痢・悪心・嘔気・腹痛などの消化器症状が出現することも多いようです。
このような前触れがあれば、愚痴を聞いてもらうことも一つのストレスの捌け口になると思いますが、
以前勤めていた病院で救急医療に従事していた際に、自殺を図って搬送される患者が多かったです。
特に春先、新年度が始まり環境や学校生活の変化が一つの原因かと思われます。
今、簡単に「新年度」と言いましたが、欧米は9月が新学期です。じゃあ、世界では?ということですが
アメリカ合衆国のアラスカ州は、自殺者のピークは4〜8月、一方の南半球のブラジルサンパウロは
11月ごろがピークで北半球の春先に当たります。スイスでは5〜7月の自殺者が最も多く、結果的には
地球上のどこでも、昔から春先に自殺が多かったという結果が興味深かったです。
日本だけ?5月に?というのは早とちりな話であって、医学的には、春先に日照時間が増えることで
メラトニンが減少し、そのことが自殺のスイッチを入れるという推測がなされているのです。
米国の報告では自殺した人の2年以内に行った血液を調べると、ビタミンDの低下と自殺率には
相関があることが報告されています。日光浴が自殺を予防する可能性があるかもしれません。
死にたくなる事は、誰しもあるかもしれません(私はありませんが)。
実際に自殺された方の中には後悔されている方もいると思います。
春先の自殺をめぐる研究をきっかけにして予防策が進み、悲しい出来事が減ることを祈っています。
※メラトニン:脳の松果体から分泌されるホルモンで日々の睡眠、体温、ホルモン分泌のリズムなどの
調節に関わっている物質。葉物野菜(白菜、キャベツ、ケール)に多く含まれています。