心血管の増加は高齢化のせい?
70歳代の患者さんは、若く感じる。これは患者さんに限らず浸透しているご意見であると思います。病院やクリニックサイドからすると、加齢とともに併存疾患を抱えて、入退院を繰り返す患者さんは医療支援だけではなく、社会的にも大きな影響を与えていて、行政を巻き込んだ対策が求められています。心血管疾患患者さんの増加は高齢人口の増加だけが問題なのでしょうか?2018年英国で行われた心不全発祥に関する疫学研究では、2002年から2014年にかけて心不全患者数は約23%増加しました。ですが、年齢、性別で標準化すると心不全発症率は男女ともに7%減少し、初発年齢は上昇するものの、心不全発症リスクは低下していたのです。心不全患者の増加の原因は高齢人口によるものです。併存疾患数の増加も心不全患者数の増加に関与していたのです。この研究では社会・経済的格差の影響も検討されました。最貧困層が初発平均年齢が74.5歳であるのに、最富裕層が77.8歳と差があり、リスクも最貧困層の方が1.61倍高くなりました。これにより社会・経済的格差が心不全リスクに大きな影響を及ぼしていることが明らかになったのです。低所得者は診療機会が限られる上、服薬コンプライアンスも低下しがちです。また、低学歴な人ほど健康に対する意識が低く、喫煙、高血圧、肥満、運動不足、糖尿病など多くの併存疾患の原因を抱える人が増えます。また、貧困地区に住むこと自体、運動できる環境や健康食品を扱う店が乏しく健康的な生活を送るには往々にして不向きであります。また失業自体も心血管疾患のリスクを高める重要な因子となります。所得・学歴・生活環境・雇用状況なども多いに関連するのです。また、注目すべきは、未婚の男性が既婚の男性に比較して3倍以上心血管疾患による死亡率が高いということです。この原因は、生活習慣の乱れ、受診のハードルも高くなり、服薬コンプライアンスも低下しがちです。孤独は心理的ストレスとなり痛みと同様になります。交感神経が亢進して免疫機能が低下してしまうことも心理的ストレスが引き起こすとされています。女性に関しては社会的ネットワークに積極的に参加していることが多く(交友関係が広い)、ストレスへの対処能力が少なくとも男性よりも優れていることが多いようです。高齢化に加えて、社会・経済的格差の拡大、未婚・失職などで社会的なつながりが乏しい男性が増えている現在ですので、今後も心血管疾患がさらに増加することが予想されます。